甲子園の風BACK NUMBER
「地元出身がいない」の声に…未来富山の甲子園アルプスで聞いた“意外な本音”「若者を町で見かけるだけでうれしい」「高校の存在知らなかった」
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梅津有希子Yukiko Umetsu
photograph byYukiko Umetsu
posted2025/08/13 06:01
未来富山アルプスを埋めた大応援団
「すれ違った時に元気に挨拶をしてくれたり、皆さんとても礼儀正しくて、身近に感じていました。そんな彼らが甲子園に出るということで吹奏楽のメンバーを募集しており、ぜひ自分も参加したいと思ったんです」(澤泉氏)
指揮をするのは、新川高校吹奏楽部顧問の西田澄氏。通常、野球応援では選手のリクエスト曲を聞くことが多いが、今回は県大会終了後に急きょ発足した合同吹奏楽団ということもあり、そのような余裕もなく、新川高校が使っている応援曲を使用することに。『さくらんぼ』や『タッチ』『夏祭り』などの定番人気曲を選手の打席ごとに演奏。ランナーが二塁に進むと、チャンステーマに切り替える。サッカー日本代表の定番チャントとして知られる『日本オーレ』を『未来オーレ』と呼び、西田氏のタクトで何度も甲子園に鳴り響かせた。
強さに衝撃受けて…応援団長は大学生
魚津工業の野球部員も応援に駆けつけた。「未来富山とはよく練習試合をしているので、甲子園にも応援に来たかった」と、メガホンを手に大声でエールを送った。
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応援席を仕切り、鼓舞していたのは応援団長の宮崎浩介氏。氷見市出身の宮崎氏は、高岡高校時代に応援団長を務め、現在通う東京都内の大学でも応援団に所属している。富山大会の決勝で見た未来富山の強さに衝撃を受け、応援団長を買って出た。
「とにかくピッチャーの江藤蓮君が圧倒的で、彗星の如く現れた未来富山を応援したい、彼らに富山県民の希望を託したいと、応援団魂を強く揺さ振られました。『どうしても応援したい』と未来富山の関係者に直訴し、応援団長をやらせていただくことになったんです」(宮崎氏)
スタンドの応援は、観客が好き勝手に声を出せばいいというわけではなく、まとめ役がいないと一体感は生まれない。「誰かを応援する」という応援団の魅力に取り憑かれた宮崎氏の熱いリードによって、観客の心はひとつになっていった。
未来富山の応援団責任者・福俣慎一氏も、一体感のある応援に感激しながらこのように話す。

