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「僕らは箕島を残せるんだろうか…」あの甲子園連覇の“名門公立校”で定員割れ、衝撃の倍率0.74「本当にきついです…」箕島野球部監督の告白 

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曹宇鉉

曹宇鉉Uhyon Cho

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posted2025/08/18 11:21

「僕らは箕島を残せるんだろうか…」あの甲子園連覇の“名門公立校”で定員割れ、衝撃の倍率0.74「本当にきついです…」箕島野球部監督の告白<Number Web> photograph by NumberWeb

和歌山県立箕島高校のグラウンド。春夏合わせて4回甲子園優勝している

「正直、お金はないです。設備を充実させようにも、グラウンドに土を入れたら終わりです。ホームベース裏のネットも、北畑監督の実家の鉄工所が無償で作ってくれました。華々しいところを想像されていたら申し訳ないんですけど、箕島高校やと思えないでしょ? あれだけの卒業生がいて……。もう名門なんて通用しないですもん、いまの子たちに」

 耐久高校を卒業した36歳の中尾は「箕島がすごかったなんて、僕も大人になるまで知らなかったですから」と明かした。全盛期をリアルタイムで知らない者にとって、箕島の栄光は実感を伴わない歴史的事実でしかない。だが近隣の有田中央や耐久でも監督を経験した北畑との会話のなかで、中尾の印象に強く残った言葉がある。

「有田中央や耐久の監督が背負う重りが10kgやとしたら、箕島は100kgや」

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 恵まれない環境下でも「箕島」の重い看板を背負おうとする北畑は、こんなことを口にした。

「部員が少ない原因は僕にもあると思う。正直、指導は厳しいので」

 公立校としては珍しく、箕島はいまでも強度の高い長時間練習を是としている。自由参加の朝練を含めると、1日の練習時間は6時間以上にも及ぶ。ノックやトスバッティングといった通常のメニューから、室内練習場でのウェイトトレーニングまで、みっちりと負荷をかける。

 加えて、部員の誰もが「しんどいっす」「異次元です」と口を揃える伝統のラントレ(50mや70mのダッシュを20~30本以上も繰り返す)もある。54歳の北畑は自身の指導スタイルを「昭和ですよ」と表現した。一方で、近隣のスポーツ専門学校の協力のもと選手たちの除脂肪体重や筋肉量を測定し、食生活やトレーニングに反映するといった現代的な取り組みも行っている。

「えっ、坊主ですか?」中学生の反応

 また、部員の髪型は丸刈りに統一されていた。「うちは坊主です。いいのか悪いのかわからないけど、それで来ない子らも正直いてます」。短く刈り上げた自らの頭を撫でながら、北畑はそう打ち明けた。特に軟式のチームでプレーする中学生は、丸刈りに対する抵抗感がある。勧誘先で「えっ、坊主ですか?」と拒否反応を示されることも少なくない。部長の中尾が「いまも坊主でやっている高校は県内で10校もないでしょう」と補足する。

 昭和、坊主、学力。箕島が選ばれない理由を、北畑は簡潔にそうまとめた。OBから「いまは昔とちゃうねん。お前が変われ。やり方を変えろ」と言われたこともあった。それでも指導の根幹を変えるつもりはないという。

「いまうちにいる子らは、厳しい練習も率先してやってくれる。昔に比べたらホンマに真面目です。ランニングでもダッシュでも1本目から30本目まで抜かないし、数もごまかさない。僕は言うんですよ。そんなんほかはやってないよ、智弁だけだよ、そこは自信持とうよ、と」

 北畑は繰り返し部員たちに呼びかける。「普通の高校じゃないよ。箕島だよ、箕島なんだよ」と。ただ、その言葉がどれだけ響いているのかはわからない。過去の栄光と、勝利が遠い現状。現役部員はどんな思いを抱いて箕島で野球に打ち込んでいるのか。「甲子園は遠い夢だなと感じます」「それでも箕島に入ってよかった」――彼らの本音を探っていく。

<続く>

#3に続く
「ちゃんと答えろよ! 箕島高校やぞ」“甲子園から消えた”名門公立校、現野球部員がポツリ「甲子園は遠い夢です…」「ウチは今、和歌山で“中の下”レベル」
この連載の一覧を見る(#1〜5)

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