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広陵アルプスの空席…その本当の理由「それもあります」記者が試合当日に聞いた“現地の戸惑い”「えっ、いないの?」「選手の声がよく聞こえた」 

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梅津有希子

梅津有希子Yukiko Umetsu

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posted2025/08/09 06:00

広陵アルプスの空席…その本当の理由「それもあります」記者が試合当日に聞いた“現地の戸惑い”「えっ、いないの?」「選手の声がよく聞こえた」<Number Web> photograph by Yukiko Umetsu

甲子園アルプス、当日の様子

「それもありますが、吹奏楽コンクールを控えていることもあり、『応援は、今回は野球部だけで行こう』ということになりました」(応援団責任者教員)

――学校側に、一般の方からの声や誹謗中傷などは届いていますか。

「さまざまなお声をいただいているのは事実ですが、我々は、いつも通りの中井野球をするだけです」(応援団責任者教員)

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 アルプススタンドにズラリと並ぶ野球部員は100人を超える。筆者は全出場校の応援席を取材しているが、ここまで大人数の野球部はそう多くはない。これだけの大所帯をまとめるのは、並大抵のことではないだろう。

 その日の応援は、「ポパイ・ザ・セーラーマン」「ダイナミック琉球」「アフリカン・シンフォニー」などの応援曲を、イニングごとに切り替えていくスタイルだった。野球部員にも話を聞いた。

――吹奏楽部がいない応援ですが、やりにくさはありますか。

「音がないと難しい部分もありますが、自分たちの声でしっかり応援します。平常心を保ってがんばろうと思います」

 少し考えて、言葉を選びながらも、しっかりと礼儀正しく答えてくれた。

相手校も驚き…「え、いないんだ?」

 得点が入ると、いつも通り肩を組んで「宮島さん」を歌う。広島カープの応援でも知られる、「宮島さんの神主が おみくじ引いて申すには……」という歌詞でおなじみの、あの曲だ。

 5回のクーリングタイムで向かい側の旭川志峯アルプスに移動し、吹奏楽部顧問にも話を聞いた。

――広陵は吹奏楽部がいませんが、どう思いましたか?

「見た瞬間『え、いないんだ?』と驚きましたが、野球部がたくさんいるので声がよく聞こえてすごい迫力です。我々は、ブラスの音色で応援に華を添えたいと思います」(吹奏楽部顧問・嶋崎彩音氏)

 名物応援の「仁義なき戦い」や、地元旭川出身の玉置浩二のヒット曲「田園」などを奏で、グラウンドで戦う選手たちにエールを送った旭川志峯吹奏楽部。結果は、広陵が旭川志峯に逆転勝ちし、3年連続の初戦突破となった。

 広陵は、今年1月に複数の野球部員が下級生に暴力をふるったなどとして、高野連から厳重注意を受けているが、これとは別に、2年前に野球部の元部員が監督や一部の部員から暴力などを受けたという情報がSNS上で広がっている。これについて、学校側では指摘された事案は確認できなかったとしたうえで、弁護士などで作る第三者委員会を設置して調査を進めていることを明らかにした。

 次戦はどのような応援体制になるのだろうか。

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