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広陵アルプスの空席…その本当の理由「それもあります」記者が試合当日に聞いた“現地の戸惑い”「えっ、いないの?」「選手の声がよく聞こえた」

posted2025/08/09 06:00

 
広陵アルプスの空席…その本当の理由「それもあります」記者が試合当日に聞いた“現地の戸惑い”「えっ、いないの?」「選手の声がよく聞こえた」<Number Web> photograph by Yukiko Umetsu

甲子園アルプス、当日の様子

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梅津有希子

梅津有希子Yukiko Umetsu

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Yukiko Umetsu

 19時29分の試合開始となった8月7日の広陵(広島)-旭川志峯(北北海道)戦。直前の叡明(埼玉)-津田学園(三重)戦が延長12回タイブレークとなり、開始予定だった18時45分からずれ込み、異例の遅さのプレーボールとなった。

 野球部で暴力事案があったことがSNSで拡散され、多くの高校野球ファンが「本当に試合は行われるのか」と成り行きを見守っていたが、予定通りの出場となった。

「見たことない…」広陵アルプスの様子

 10年以上前から吹奏楽部の応援取材を続ける筆者も、19時すぎにアルプススタンドに足を踏み入れたが、その異様な光景に思わず息を飲んだ。吹奏楽部の定位置である「ブラスバンド席」には誰もおらず、すべて空席。ナイターの照明に照らされた緑色の椅子が不気味な輝きを放ち、ざわめきのない静かな応援席は、これまでに経験したことのない空気に包まれていた。

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 いつもの広陵スタンドだと、ブラスバンド席には赤いクラリネットを構えた生徒がズラリと並ぶ。クラリネットというと、グラナディラなどの木で出来た黒い楽器が一般的だが、広陵はABS樹脂というプラスチックの一種でできた、通称「プラ管」を使用している。日光や雨などにも強く、耐久性が高いため、マーチングなどの屋外演奏でよく使われている楽器だ。この「プラ管」を揃えている学校を見ると、「野球応援慣れしている学校だな」「マーチングに力を入れている吹奏楽部なんだな」ということがわかるのだ。

 青空の下、球音が響くスタンドに赤いクラリネットが並ぶ光景が珍しく、筆者はその光景を見るたびに夏を実感していた。しかし、今年の広陵スタンドに、あの象徴的なクラリネットはいない。

 今回は、メディアの数も明らかに多かった。例年、1回戦はプロ注目の選手がいるなど、よほどの注目校でもない限り、地元テレビ局と新聞記者など数人いる程度だが、この日は普段の倍以上のメディアが様子をうかがいに来ているようだった。

なぜ吹奏楽部不在?「それもありますが…」

 決して取材しやすい雰囲気とはいえなかったが、吹奏楽部の不在が気になり、応援団責任者の教員に話を聞いた。

――吹奏楽部とチアがいませんが、今回の騒動も関係あるのでしょうか。

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