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野球クロスロードBACK NUMBER
甲子園スタンドから「かえれ~」の声も、拍手にかき消され…暴力事案で揺れる広陵高 選手は「動揺は特になかったです」 現地で感じた“SNSとの温度差”
text by

田口元義Genki Taguchi
photograph bySankei Shimbun
posted2025/08/08 17:00
1回戦で旭川志峯に3-1で勝利した広島の広陵。試合前から紛糾していた暴力事件問題の影響からか、勝利後には監督・選手に目には涙も
ただ、広陵が抱える問題が問題だけに、報道陣はそこに関連付けようと質問をかぶせるようになった。それは、この問いかけがきっかけだった。
――難しい状況のなか、接戦を勝てたことについてどう思っているか?
「いろんなことで、みなさんにご心配をかけた」
朗らかな表情だった中井の顔が、また硬くなる。言葉も詰まったが口調は穏やかだった。
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「う~ん……本当にあの……いろんなことで、みなさんにご心配をかけたんですけど。こうして夢の舞台の甲子園に立てて、子供たちが全力でプレーできたことに感謝しかありませんし、よく頑張ってくれたと思います」
そこから、中井の試合中の表情について「選手の緊張をほぐすためか?」「今日に関しては力が入ったからか?」と訊かれたが、中井は「そうなんですかね?」とやり過ごす。とはいえ、嫌そうなそぶりはない。きっと、場の空気を物々しくさせたくないと、配慮してくれていたのだろう。
これは現時点で中井ができる、精一杯の誠意の表現だったに違いない。
広陵はいま、大きな批判にさらされている。
<次回へつづく>

