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新横綱・大の里はなぜ崩れたのか?「じつは“初物”に弱い」まともに引く悪いクセが再発…「やっぱりだめですね」終盤に見せた“苦笑い”の正体
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荒井太郎Taro Arai
photograph byJIJI PRESS
posted2025/08/05 17:00
大相撲名古屋場所13日目、優勝した琴勝峰に敗れ、支度部屋で取材に応じる大の里
“鬼門”の名古屋で4個の金星配給…いったいなぜ?
唯一、懸念があるとすれば、名古屋場所が“鬼門”であることだ。プロ入り2場所目の一昨年は幕下3枚目で3勝3敗に追い込まれ「ご飯も食べられない、しんどい状態が続いた」と苦しみ、最後の相撲で勝ち越しと新十両を辛うじて決めたのだった。昨年も新関脇で連敗スタート。出だしで1勝3敗と躓き「勝ち越しも危ういと思っていた。考え過ぎていた自分がいた」。その後は立ち直ったものの9勝に終わり、新入幕からの連続2桁勝ち星は戦後史上1位タイの3場所で途切れた。
注目の初日は小結欧勝馬を全く問題にせず、土俵際もしっかり腰が下りて寄り切る万全な取り口での白星発進に「先場所とやることがいろいろと違った。初めてのことだらけで今日はタイミングを見つけるのが大変だった。今日勝てたのは大きいと思う」と安堵の表情。初めて本場所で横綱土俵入りを披露したが「横綱は土俵入りと本割、一日2番相撲を取るようなもの」と経験者の誰もが語るように、心身両面にかかる負担は、われわれの想像以上なのだ。
翌2日目はこの場所、大ブレークすることになる安青錦を一蹴。続く3日目の若元春戦も無双ぶりを発揮し、初日から3連勝。あまりの盤石ぶりに、このまま優勝戦線をけん引するものと思われたが、4日目はどこか淡白な相撲ぶりで王鵬に押し出され、金星を初めて配給することに。それでも5日目は、以前は3連敗していた阿炎に完勝。「しっかり切り替えて、落ち着いてやることができてよかった」と連敗は免れ、立ち直ったかに見えた。しかし、8日目の伯桜鵬戦で2個目の金星を与えたあたりから、雲行きが怪しくなってきた。
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横綱豊昇龍の休場により、5日目からは新横綱にして一人横綱となり、番付最上位としての責務を一身に背負うことになった。「先のことは考えず、自分のことだけを考えて星を伸ばせるように頑張ります」と気丈に語ったが、あれほど盤石だった相撲ぶりが、後半戦になるとすでに克服されたかに思えた悪癖のまともな引きが随所に見られ、自ら墓穴を掘る場面が目につくようになっていく。

