新横綱・大の里はなぜ崩れたのか？「じつは“初物”に弱い」まともに引く悪いクセが再発…「やっぱりだめですね」終盤に見せた“苦笑い”の正体

　完成したばかりの最先端設備を誇るIGアリーナの“こけら落とし”として行われた今年の名古屋場所は、4年ぶりに番付の東西に横綱が揃うなど、場所前から大きな話題に沸いた。その中心にいたのは言うまでもなく、日本出身としては8年ぶりに誕生した新横綱の大の里だ。

　入門から史上最速の所要13場所で角界の頂点に上り詰めるなど、記録ずくめのスピード出世で綱を張った25歳の超逸材には、大きな期待が懸かっていた。

朝青龍や白鵬も躓いた「新横綱場所」の難しさ

　横綱デビュー場所で賜盃を抱けば、隆の里、稀勢の里と続く、史上初の師弟3代にわたる新横綱優勝の快挙となる。最速で綱を掴み取ったこれまでの圧巻の相撲ぶりからして、達成の可能性は十分と思われた。また、大関で連続優勝からの新横綱Vで3連覇となれば、太刀山、栃木山、双葉山、大鵬、貴乃花という過去の錚々たる5人の大横綱と肩を並べることになり、“唯一無二”の横綱として君臨する未来の想像をこれほど掻き立てられることはない。

ADVERTISEMENT

　新横綱に昇進すれば、関係各所への挨拶まわりや公式イベントへの参加など多忙を極め、稽古時間の確保もままならず、調整が難しいと言われている。朝青龍や白鵬も新横綱場所は昇進前の強さが嘘のような平凡な成績であったが、大の里に限って、そんな心配は無用だったであろう。

7月5日、名古屋市の熱田神宮で奉納土俵入りを披露する大の里　©JIJI PRESS

　6月は巡業がない分、限られた時間ではあったであろうが、部屋でみっちりと稽古に取り組み、自分のペースで調整できるなど、今年春場所で3場所ぶり3回目の優勝を果たしたときと状況は似ている。新大関だった昨年九州場所から2場所連続で不本意な成績に終わると、初場所後の巡業がない2月は四股や腰割り、すり足といった基礎から見つめ直し、下半身を徹底して強化。満を持して大阪入りし、大関3場所目を迎えたのだった。

【次ページ】　“鬼門”の名古屋で4個の金星配給…いったいなぜ？