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「背中を一発、ポンと叩いてくれたんです」横浜F・マリノス主将・喜田拓也の心が震えたクラブOBの “無言のメッセージ” 契約解除の監督からも電話が…
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二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byGetty Images
posted2025/08/09 11:02
クラブ史上初のJ2降格の危機に直面している横浜F・マリノスのキャプテン喜田拓也がチームの現状と展望を語った
GKから無理につながず、前線の「個」を活かすべくシンプルにロングボールを送った。ゴールに向かう、点を奪うという絶対的原則を強調するためでもあった。
前半19分に扇原貴宏のパスからエリキという元F・マリノス勢による連係で先制点を奪われてしまう。それでも前半43分、喜田が無回転のミドルシュートを叩き込んで同点に追いつく。これがチームにとって4試合ぶりのゴールとなった。
流れがF・マリノスに傾いたかに見えたが、ヴィッセルも上位進出のためには是が非でも勝ち点3が欲しい試合。お互いに意地をぶつけ合うゲームは、後半6分、扇原のFKから大迫勇也にヘディングで押し込まれて勝ち越しを許す。反撃も実らず、クラブワーストの7連敗を喫する結末となった。だがスタンドからはブーイングではなく、拍手が注がれた。何とかしようともがき、みんなで共有できていることがファン・サポーターにも伝わっていた。
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受け入れがたい結果ではあるものの、小さな変化の兆しを喜田自身も感じ取ったことも事実だ。
それでも耐える時間は続く。
契約解除となったキスノーボ監督からの電話
ケガ人が多く、負のスパイラルに陥っている最中。鹿島アントラーズ、FC町田ゼルビア相手に2連勝したものの、天皇杯2回戦でラインメール青森に敗れ、アルビレックス新潟とのアウェイマッチを0-1で落としたことでキスノーボ監督も契約解除となる。
キスノーボから喜田のもとに電話があったという。
「PK(キスノーボ監督の愛称)からは『みんなの力になれないのは申し訳ないけれど、このチームのことを信じている』という言葉がありました。こういう難しい状況のなかでも自分たちのキャラクターや能力を一番分かっている(大島)秀夫さんが(監督を)引き受けてくれた。僕たちも監督、コーチングスタッフに任せるだけではなくて、選手たちも自分たちで判断を上げていく。むしろそこが足りないところではありました」
F・マリノスの歴史が、大事なことを教えてくれていた。

