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「ジャニーズ系棋士」は“羽生善治世代”奨励会の落ちこぼれだった…「名人になります」郷田真隆が21歳初タイトル→54歳で1000勝するまで
text by

田丸昇Noboru Tamaru
photograph byJIJI PRESS
posted2025/07/29 06:00
羽生世代の一員として棋界を引っ張る郷田真隆九段。その素顔とは
郷田は師匠の大友八段に勧められ、1982年10月に行われた関東奨励会の入会試験を受けた。東西を合わせて約100人の受験者の中には羽生善治、佐藤康光、森内俊之ら、後年のタイトル保持者がいた。受験者同士の1次試験、奨励会員との2次試験を経て、東西で24人、郷田と前記の3人も合格した。
奨励会に入会後、佐藤は6連勝して5級にすぐ昇級した。羽生と森内も3カ月後に同じく昇級。しかし郷田は9連敗し、さらに負けが込んで7級に降級した。羽生世代の中で当初は落ちこぼれたが、それ以降は別人のように勝ち続けた。
郷田は昇級と昇段を確実に重ね、1988年に三段リーグに入った。そして4期目に14勝4敗の成績を挙げ、90年4月に19歳で四段に昇段して棋士になった。最後の1年は食事、風呂、睡眠以外は、ずっと盤の前に座って勉強したという。
21歳で谷川を下して初タイトルの王位獲得
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1990年頃、同世代の羽生は初タイトルの竜王を獲得し、佐藤と森内は各棋戦で活躍していた。郷田は彼らより遅れた期間(四段昇段)を取り戻すように、棋士デビュー時から勝ちまくっていた。
1992年に王位戦の挑戦者決定戦で、郷田四段は佐藤康光六段を破り、谷川浩司王位(同30=四冠)への挑戦者になった。郷田はジャニーズ系タレントのような端整な容貌で、和服がよく似合っていた。谷川は「とうとう仇役になりました」と苦笑した。
郷田は王位戦第1局で逆転勝ちして3連勝すると、谷川は2連勝して巻き返した。そして第6局で郷田は落ち着いた指し回しで激闘を制し、21歳で初タイトルの王位を四段として初めて獲得した。
郷田新王位は戴冠後、次のように語った。
「ファンの方には精神的な励まし、棋士からは多くのアドバイスをいただきました。今後は自分の納得がいく将棋を指していきたいです」
この快挙を受けて、母親も取材に答えている。「本人から電話があり、《勝ったよ》といつものようにボソボソと言うんです。強い方が多い厳しい世界なので、私は負けても本人が成長してくれれば、と思っていました」と語った。
西田ひかるとの対談で、21歳の素顔を
そんな郷田が21歳らしい素顔を見せたのは『将棋世界』誌で企画したタレント・西田ひかる(20歳)との対談だった――。〈つづく〉

