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「ジャニーズ系棋士」は“羽生善治世代”奨励会の落ちこぼれだった…「名人になります」郷田真隆が21歳初タイトル→54歳で1000勝するまで
posted2025/07/29 06:00
羽生世代の一員として棋界を引っ張る郷田真隆九段。その素顔とは
text by

田丸昇Noboru Tamaru
photograph by
JIJI PRESS
郷田真隆九段(54)は7月9日のB級2組順位戦で戸辺誠七段(38)に勝ち、史上13人目となる公式戦で通算1000勝を達成した。妥協のない剛直な棋風は「一刀流」と称され、加藤一二三・九段(85)のように序盤から持ち時間を惜しげもなく使う長考派の棋士だ。
「羽生世代」の棋士たちと奨励会入会が同期ながら当初は落ちこぼれ、「ジャニーズ系棋士」と呼ばれたほどの端整な容貌、21歳・四段で初タイトルの王位を獲得など――郷田の公私にわたるエピソードを、田丸昇九段が紹介する。【全2回の1回目/棋士の肩書はいずれも当時。初出以外は省略】
「将棋そのものは若手のころと何ら変わりません」
「偉大な先輩棋士が作られた記録と思っていたので、実感はあまりないです。ただ35年の長い現役生活で、いい節目になりました。将棋そのものは若手棋士の頃と何ら変わりません。最善手に向き合って指していきます。最近は内容が悪いので、いい将棋を指したいと心がけています」
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通算1000勝達成について、郷田九段はこのように淡々と語った。
いわゆる「羽生世代」の代表格の1人である郷田だが、同世代の羽生善治九段(54)、佐藤康光九段(55)、森内俊之九段(54)と比べて、四段昇段が3~5年ほど遅れた。そのため1000勝達成も後になった形だ。
郷田は1971年3月17日、東京都練馬区で生まれた。3歳で将棋好きの父親から習い、以降はずっと父子で指していた。小学3年の頃には息子の方が強くなり、母親に「ほかの人たちとも指してみたい」と頼んだ。そして、引退棋士の大友昇八段(当時48)が開いていた近くの将棋クラブに連れていってもらった。
奨励会で9連敗と当初は落ちこぼれたが
大友八段の話によれば、郷田は平手で指したいと希望し、途中の局面で「先生、投げてください」と言ったという。勉強した棋書には、自分が優勢と書かれていたのだ。さらに「名人になります」と語った。大友は郷田の率直な言い方に驚いたが、将来性を買って弟子にした。

