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「2年前なら…でも今は藤井さんに追いつけてません」永瀬拓矢32歳、藤井聡太22歳との実力差を包み隠さず語る「準備の差としか言いようが」

posted2025/06/22 11:02

 
「2年前なら…でも今は藤井さんに追いつけてません」永瀬拓矢32歳、藤井聡太22歳との実力差を包み隠さず語る「準備の差としか言いようが」<Number Web> photograph by Keiji Ishikawa

王将戦、名人戦と2つの2日制タイトル戦で藤井聡太と相まみえた永瀬拓矢。今感じることとは

text by

大川慎太郎

大川慎太郎Shintaro Okawa

PROFILE

photograph by

Keiji Ishikawa

藤井聡太七冠(22歳)に挑み続けるためのモチベーション、その根源とは。絶対王者に挑んだ永瀬拓矢九段(32歳)が名人戦を終え、来たる王位戦に向けて語りつくす。〈NumberWebノンフィクション。初出以外は棋士の段位・称号は省略/全4回。第4回へつづく〉

「痛すぎます」伊藤匠に負けた永瀬の本音

 名人戦第5局から5日後の6月4日。伊藤匠叡王に王座戦準々決勝で敗れ、3年連続の王座挑戦が断たれた永瀬に、「話を聞かせていただけませんか」と終局後に声をかけた。

 永瀬は快諾してくれ、2人で将棋会館の休憩室に移動した。普段は棋士が昼食をとる部屋で、ドリンクの自動販売機もある。この日、一番遅い終局だったので部屋には誰もいない。椅子に座ると、永瀬が対局中に飲んでいたミネラルウォーターの新しいものを「よかったらどうぞ」と勧めてくれた。「最近、愛飲されていますね」と言うと、「激ウマだと思います。自分の研究室にも置いていて、研究会に来てくれた皆さんも手に取れるようにしてるんですよ」とにこやかに言った。

 まずはこの日の王座戦について聞いた。ベスト8で敗れて準決勝がなくなってしまったことについては、「痛すぎます。公式戦をたくさん指したいんですよ。名人戦の第6局もなくなってしまいましたし」とため息をついた。さすがに4、5月の月8局は多かったが、永瀬は公式戦をたくさん指すことで調子を維持し、上げていくタイプである。

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 名人戦という言葉が出たところで、第5局について尋ねた。これまで記してきた第5局の局面に関する感想は、この時に話してもらったものである。

夢の名人戦で得た自信と成長

 改めて、今期の名人戦を振り返ってどのような感想を持っているのか。

「後手番でも戦えていますし、悪くはありません。どんな環境でもベストを尽くせたことは自信になりました。精神的に色々鍛えられましたね」

 名人戦は多くの棋士にとって憧憬の舞台である。永瀬はペットボトルの水をごくりと飲んでから話し始めた。

「子どもの頃からの憧れなので、プレーオフを勝った時は信じられない気持ちでした。やっぱり『名人戦』という響きはすごいものですから。ただ今の将棋界は、叡王戦以外どこで挑戦しても相手は同じなんですよ(笑)。王将戦から名人戦に名前が変わって、持ち時間が8時間から9時間になった。今度は王位戦になって、持ち時間が8時間に戻る。そういうことです」

 ふと、レーティングの話を思い出した。

【次ページ】 ハハハ…定期的に2日制を戦えるならVSは必要ないですよ

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