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「思いどおりに動かない」“ガラスの天才”山田直輝に突き刺さった悪意なき言葉…幼馴染の妻が語る“どん底のヤマダ君”「泣き方すら知らなかった」
text by

山田A子A-ko Yamada
photograph byFAR EAST PRESS/AFLO
posted2025/07/29 11:01
浦和レッズで頭角を現し、世代を代表する選手として期待を集めた山田直輝
オリンピック本戦が始まるころには、2カ月にわたった入院生活も終わり、彼は松葉杖をついて自宅で静養していた。
テレビに映るU-23日本代表の姿。私は複雑な気持ちで、とてもその画面を直視できなかった。
けれどヤマダ君は、かつての仲間たちの健闘を心から願い、その活躍を喜び、祝福していた。それは偽りのない、本物の祝福に見えた。
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そして彼は、画面の向こうの選手たちから、大きな力を受け取っているようだった。まるで、自分の未来もまた、あのフィールドの続きにあると信じて疑っていないかのように。
その横顔には、自分もまた必ず戻るという決意と希望が満ちあふれていた。
そんな彼のあり方を前に、私は、自分には到底、こんなスポーツマンシップはもてないと感じるのだった。
そうした強い思いを胸に、彼はリハビリへと歩み出した。
しかし、いざ始まってみると、彼の体は思うように回復してくれなかった。復帰への道のりは、想定されていた期間をはるかに超え、足を踏み出すたび、その厳しさを思い知らされた。
一方で彼は、「今が“どん底”にいるのだから、あとは上がるだけだ」と口にしていた。
復帰したら、これまで以上に活躍してみせる。そんな決意とともに、国際試合や海外移籍を見据えて英語の勉強を始めたのもこのころだった。それは、苦境のなかにあってもなお前を向こうとする、彼なりの一歩だった。

