「あれ、阪神スカウトだけ来てないぞ…」他球団が恐れた阪神タイガース“宝探し”の極意とは？ 緻密で大胆なドラフト戦略「昔より真面目なスカウトが増えた」 

　その一方で、今年に入ってから高校生の有力投手が登板する試合に、阪神のスカウトだけがいないというケースもあった。

　他は幹部クラスも顔を見せている球団も多く、実際にその選手のパフォーマンスを素晴らしいものはあったが、試合後にその選手は大学への進学が基本線であることを表明。結果としてこのタイミングで多くの目でチェックする必要はなかったということであり、阪神の判断は正しかったということになる。実際、どの程度阪神が情報をつかんでいたかは分からないが、これも阪神の現場のスカウトが他球団をリードした事例と言えるだろう。

「コロナ禍ドラフト」の大成功

　また、話に出た2020年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で春、夏の甲子園や大学選手権、明治神宮大会など多くの大会が中止になり、スカウトにとっては活動が最も難しかった年と言われている。

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　その中で阪神は佐藤輝明（1位）、伊藤将司（2位）を筆頭に村上頌樹（5位）、中野拓夢（6位）、石井大智（8位）と5人もの主力選手を獲得しているのだ。佐藤は4球団が1位で競合した目玉選手であるが、他の4人については判断が難しかった選手ばかりである。

JR東日本時代の伊藤将司　©︎Sankei Shimbun

　2位の伊藤は横浜高校、国際武道大でも主戦として活躍していたものの、ストレートは140キロ台前半がアベレージで、凄みがあった投手ではない。しかし社会人のJR東日本では常に先発として投げ続けており、圧倒的なピッチングをするわけではないが、試合を壊すようなケースはなかった。言ってみれば何度も見なければ良さが分からないタイプの投手と言える。この年はコロナ禍でオープン戦も公開しているチームは少なかったが、その中でJR東日本は比較的オープンな姿勢を貫いており、そこで阪神のスカウト陣が何度もチェックする中で評価を上げた部分も大きかったようだ。

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