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「徹夜マージャン中に突然の電話」田淵幸一の阪神→西武電撃トレード決定の夜に同席…江本孟紀が知るウラ話「阪神は2000万円の積み増し要求」 

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江本孟紀

江本孟紀Takenori Emoto

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posted2025/07/20 11:03

「徹夜マージャン中に突然の電話」田淵幸一の阪神→西武電撃トレード決定の夜に同席…江本孟紀が知るウラ話「阪神は2000万円の積み増し要求」<Number Web> photograph by Kyodo News

阪神の主砲として活躍した田淵幸一だが、西武への電撃トレードを経験することになる

 翌日のスポーツ紙の一面は「田淵、新生西武ライオンズへトレードへ」という見出しが並んでいた。よくよく見ると、昨日一緒にマージャンをしていた古澤も翌朝、西武へのトレード通告を受けた。2度びっくりした。九州にあった西武の前身であるクラウンライター・ライオンズからは真弓明信、若菜嘉晴、竹之内雅史、竹田和史の4人が来ることになった。2対4の大型トレードに、球界に激震が走った。

ブレイザーが思い切って田淵さんを放出したワケ

 時間が少しずつ経過していくにつれ、「まさか、田淵さんと古澤をわざわざ出すの?」と球団に対して逆にやる気を感じた。実際に小津正次郎球団社長に望んで田淵さんのトレードを決断し、ゴーサインを出したのは、ほかでもないブレイザー新監督本人だったのである。ブレイザーはスピード感を重視した野球を目指そうとしていた。しかし、田淵さんは走攻守のうち「攻」は期待できるが、「走」と「守」はほぼ期待できなかった。理由は恰幅がよすぎたこと、早くいえば太りすぎだった。

 この点は吉田さんも大変気にしていて、田淵さんをやせさせようと、春季キャンプ中にひたすらランニングだけさせておくような日もあったほどだ。それでやせれば苦労はしないが、実際はなかなかうまくいかなかった。頭部に死球を受けた際の治療薬の副作用によるものだったからだ。

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 そこで、ブレイザーは思い切って田淵さんを放出し、チームの血を入れ替えることで新たに活性化させることを画策したのである。

 10年間、阪神の中心選手として、阪神ファンから愛されたチーム一の人気選手として、勝利と観客動員の増加に貢献してきた田淵さんだったが、阪神での最後は意外とあっけないものとなってしまった。

西武へのトレードは田淵さんにとって幸せだった

 話はこれだけに終わらない。じつは、このトレードは交渉の段階で、「金銭をともなわない交換である」ということで合意していた。しかし、阪神は土壇場になって2000万円のトレードマネーの積み増しを要求。

「人気者の田淵を渡すのだから、それぐらい安いものだろう」

 と言わんばかりの上から目線の姿勢が露骨だったのだ。交渉の窓口となっていた西武側の根本さんは、「話をぶち壊したくなかったので、しかたなく払った」と、のちに話していた。双方ともに、さまざまな思惑があったとはいえ、阪神にしてみれば、してやったりのトレードとなったことは間違いないのである。

 ただ、あとになってよくよく考えてみると、このトレードは田淵さんにとっては幸せなことだったと思っている。

【次ページ】 江夏を粉砕→巨人撃破で日本一、ダイエー監督にも

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