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「女の子を売りにしてない」異色の“元人気ビール売り子”が明かす中日二軍球場のリアル「見た目で評価されるのは…」“ドームがイヤだった”意外な理由
text by

曹宇鉉Uhyon Cho
photograph by本人提供
posted2025/07/05 11:00
中日ドラゴンズの二軍球場を中心に、ビール売り子として地元のファンに愛されたRiNRiNさん
ナゴヤ球場は「お前ひとりのフィールドだぞ」
――イヤな思いというのは?
RiNRiN テリトリーじゃないですけど、女の子同士でかち合っちゃうとか。お客さんが「誰がどうだ」って品定めするようなのもイヤだった。ひとりだと揉めることもないじゃないですか。ナゴヤ球場はいい意味で気を遣わなくていいというか、私のための場所なんじゃないかくらいの気持ちでした。上司にも「お前ひとりのフィールドだぞ」って言われて、ああ、やりたいようにやれると。屋外なので日焼けはすごかったですけど(笑)。
――やはりドームのほうが「女の子の人気商売」になりがちなんでしょうか。
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RiNRiN 全員がそうではないと思いますが、SNSを見ていてもそう思いますし、服装もそうですよね。ドームはユニフォームがあるけど、ナゴヤ球場はTシャツの支給だけで下は自由。売っている子たちもそういうスタンスの人が多かったり、芸能事務所に所属していたりするので、どうしてもそういう色になっちゃうんだろうな、と。個人的にはそこがむしろイヤだったというか……。見た目で評価されるのは仕事を頑張ることとはちょっと違う気がして。空手の道場とか理系の高校とか、男の子が多い環境で育ったので「女の子」としてフォーカスされることがイヤだったんですよね。
――その点、ナゴヤ球場のお客さんの反応は違いましたか。
RiNRiN お客さんも「女の子」としてじゃなくて、頑張りを評価してくれることが多かったです。どうしても売り子さんって「男の人がかわいい女の子から買う」みたいなイメージがあると思うんですけど、よく買ってくださる方にご夫婦や家族連れが多かったので、それも私に合ってました。やっぱりナゴヤ球場はドームとはちょっと客層が違っていて、独特の空間ではありましたね。
ジュースや弁当、アイスも全部ひとりで売った
――ナゴヤ球場に来るお客さんって、どんな客層なんでしょうか?
RiNRiN 平日のお昼だと「絶対、営業サボってきたなこの人」って思ったりしますね(笑)。「いま休み?」みたいな会話をしたり、「ああ、重役さんだなあ」と思ったり。私、けっこうお客さんに聞いちゃうんです。「3件回ってきたから今日はもういいや」とか「内緒だよ」とか言われるんですけど、誰に言うの、みたいな(笑)。
――人生模様が垣間見えるというか。
RiNRiN ビールの売り子だけじゃなくて、ジュースや食べ物も含めて「全部の売り子」だったので、いろんなコミュニケーションができたんですよね。なんでもありでした。5回が終わったらアイスを売り出したり、売店からお弁当を持っていったり……。ひとりだからこそ融通が利いたんです。
――売上の計算さえ合えば何を売ってもいいわけですね。

