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「変なプライドは邪魔になるだけ」ウルフアロン29歳“プロレス挑戦”の本気度は?「木村政彦から小川直也まで」柔道家のプロレス転向“成功と失敗の歴史”
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原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2025/06/28 17:00
新日本プロレスに入団したウルフアロン。来年1月4日、東京ドームでデビューする
会見で明かされたウルフアロンの“プロレス観”
柔道は勝つか負けるかの「競技」だが、プロレスは強さを求めながらも勝ち負けだけではなく「表現の場」であるというのがウルフの考え方だ。
「ぶっちゃけ、ウチはあなたに入ってほしい」という永田のオファーはウルフにとってうれしいものだった。ただ、ウルフは今年6月まで柔道を続ける予定だったため「それを終えたらプロレスをしたい」ということで合意を見た。
「総合格闘技は好きじゃない。好きということが、自分がやる上では一番大事。好きじゃないものに対してはやろうかなと思わなかった」
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MMA団体からのオファーはなかったという。
「理想とするレスラー像? 土台を作ってから考えたいと思っています。まずはプロレスラーとしての土台を作りたい」
ウルフには印象に残っている試合がある。
「2016年6月の大阪での内藤(哲也)選手とオカダ(・カズチカ)選手の戦い。体だけじゃなく気持ち、すべてをぶつけあえる試合を見て心が動かされました」
これがウルフのプロレス観なんだと私は思った。
ウルフは自宅から野毛の新日本プロレスの道場に通い、練習生たちと体を動かしている。
「周りの練習生の動きを見ている。今まで柔道しかやってきてないので。柔道でのクセみたいなものがあって、気持ち的な部分でもトップとしての自尊心があるじゃないですか。体の動きにしても柔道家っぽい動きになっているところがあるので、そういったものを一回捨てて、柔軟になっていかなきゃいけないなって。変なプライドって本当に邪魔になるだけなので。一から柔軟に考えて、新しい自分の形というものを作らなきゃいけない」
道着と裸という違いだけではない。
「今まで靴を履いてやる練習はランニングだけだったので、靴を履くと足の裏の感じが違う。半年間、練習生ですから、土台をしっかり作らないと。受け身も違うな、と感じました。受け身はケガをしないように取るものですが、畳とマットで取る受け身の違いを実感している」
「技は大内刈りと内股しかないので。プロレスで使える技はプロレスの基本の動きができるようになってから、考えようと思っています。柔道の終わりのころはスタミナがなくなっていると言われていたので、(柔道より試合時間も長くなるから)スタミナをつけないと。現在の体重は122キロ、これを110キロ前後に絞ってリングに立ちたい」
ウルフはプロレスに対して真摯に向き合う。
「自分にプロレスのセンスがあるかどうかはわからないが、しっかりとしたプロレスができるように、練習に励みたい。もちろん新日本プロレスに入った以上、テレビで見てきたIWGPというベルトは頭にありますが、今、考えるものではないかなと思います」


