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「変なプライドは邪魔になるだけ」ウルフアロン29歳“プロレス挑戦”の本気度は?「木村政彦から小川直也まで」柔道家のプロレス転向“成功と失敗の歴史”
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原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2025/06/28 17:00
新日本プロレスに入団したウルフアロン。来年1月4日、東京ドームでデビューする
気になるデビュー戦の相手は…棚橋弘至は“やんわり否定”
ルスカと同時代に新日本プロレスのリングに上がり「プロレスラーとして成功した」と言ってもいいのは1976年モントリオール五輪の銅メダリスト、アレン・コージ(バッファロー・アレン、バッドニュース・ブラウン、バッドニュース・アレン)だろう。1977年に坂口との柔道ジャケットマッチ(格闘技戦)で日本のリングに上がり、ルスカとも戦った。WWF(現WWE)も経験し、猪木もレスラーとしてアレンを気に入っていた。
イタリアやイラクという猪木の旅先でも筆者はアレンにあった。アレンは柔道着を脱いだ後、ちゃんとレスラーに変身できたいい例だろう。
小川直也は1992年バルセロナ五輪の銀メダリストだったが、1996年のアトランタ五輪後、猪木のUFOに入団して、1997年にIWGP王者だった橋本真也との戦いがプロレスデビュー戦になった。その後も小川と橋本の試合は壮絶で、「抗争を超えた抗争」が2000年まで続いた。小川がどうだったかというよりは、橋本の男気があんな試合を続けさせたんじゃないかと思う。話題性は抜群だったが、小川はプロレスラーとして大成することはなかった。
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いろんなことが起きた柔道家のプロレス転向だが、今回のウルフのケースはプロレスvs.柔道ではなく、柔道家がプロレスラーに転身した姿を見せる新たなステージのように感じられる。
ルスカの強さにアレンの柔軟さが加わったようなレスラーにウルフが変わることができれば夢は広がる。
いずれにせよ、柔道金メダリストの新日本プロレス入りは明るい話題だ。
会見で棚橋はウルフとの対決を聞かれて「道場でノーピープルで」とやんわりと回避する意向を示したが、筆者はそれも大いにありなんじゃないかと思う。引退して去って行く者と、これからの新日本プロレスを担う者の構図があってもいい。
具体的な候補はまだのようだが、新日本はそれなりの相手を用意しなければならない。手持ちのレスラーならオレッグやオーカーンもいいのではないか。勢いに乗っているゲイブ・キッドも意外とありかもしれない。
前全日本男子監督の井上康生氏にはこう言われたという。
「いいと思う。ウルフに似合っていると思うよ、って言ってもらいました。驚いている感じではなかったです」
また、ウルフが所属していた実業団チーム「パーク24」の吉田秀彦総監督にも、競技は違うがプロの世界での経験を聞いたという。
「リングネームですか? リングネームのような名前なので、いじる必要はないかな」
2026年1月4日、プロレスラーに生まれ変わったウルフアロンはどんな戦いを見せるだろうか。



