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「変なプライドは邪魔になるだけ」ウルフアロン29歳“プロレス挑戦”の本気度は?「木村政彦から小川直也まで」柔道家のプロレス転向“成功と失敗の歴史”
posted2025/06/28 17:00

新日本プロレスに入団したウルフアロン。来年1月4日、東京ドームでデビューする
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原悦生Essei Hara
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Essei Hara
「プロレスが好きだから、としか言えない」
東京オリンピック柔道金メダリストのウルフアロン(29歳)は、6月23日に東京都内で行われた新日本プロレス入団会見で プロレスを選んだ理由をそう答えた。
じつは“念願”だったウルフアロンのプロレス転向
日本の柔道の五輪金メダリストがプロレスラーになるのは初めてのことだ。
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アメリカ人の父と日本人の母の間に生まれたウルフは6歳の時から講道館の春日柔道クラブに通っていた。
日本の柔道史上8人目という「柔道三冠」(世界選手権2017年、全日本選手権2019年、五輪2021年)という偉業を達成し、パリ五輪を戦い、実業団の最後の試合をこの6月に終えたウルフは「柔道でやり残したことはない」と柔道を引退した。そして憧れた新日本プロレスでレスラーになる。
デビュー戦は来年1月4日、東京ドームに決まった。
新日本プロレスの東京ドーム大会でデビューした転向からの大物には、北尾光司や小川直也がいる。対戦相手はまだ決まっていない。
「人に見られることが好きなので、そういうことすべてが選択肢になる」と以前から柔道の後の進路についてウルフは語ってきた。
バラエティ番組でもよくしゃべり「やるなら新日」と新日本プロレスにラブコールを送っていたところから、永田裕志が自身のYouTubeチャンネルに出演依頼を送ったのがきっかけになった。
パリ五輪直前だったので、ウルフから「もう少しお持ちくださいゼァ」という返事があったという。
「(パリ五輪が終わってから)永田さんとYouTubeでコラボさせていただいた時に、そういった意思を伝えさせていただいて、新日本の方を紹介していただいた。自分でちょっと動きながら繋げていただいたという形ですね」
その後、ウルフはシュラスコ店で席を設けてもらい、木谷高明オーナーや松本仁司副社長とも会食した。
1月4日には東京ドームのテレビ解説席にゲストとして座った。
「ただ、その時は実際に目の前のリングに立つことはまだ現実味を感じなかった」という。
「私の方から新日本プロレスに入りたいとお話をさせていただきました。大学生の頃、録画した『ワールドプロレスリング』を見るのが毎週日曜日の楽しみで、選手の皆さんが裸一貫で戦ってる恰好よさ、また柔道とは違った見せ方に魅力を感じ、いつか柔道で思い残したこと、やり残したことがなくなったらプロレスをやりたいと思っていました。新日本プロレスとの契約は複数年。1年ではなく複数年です(笑)」
はちきれんばかりのスーツ姿でウルフは汗をかきながら話した。
「なぜプロレスを?と聞かれたら、好きだからです。試合前、試合、試合後、すべての生き様を見せるのがプロレスだと思います。ウルフアロンという私を表現できるのもプロレスだと思っています。1.4デビューが特例ということも十分わかっています。この半年間の過ごし方を考え、1秒1秒無駄にすることなく挑ませていただきます」