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「10年後にまた会いましょう」エル・デスペラードと葛西純「生きるためのデスマッチ」はなぜ感動を呼んだのか? 試合後、カメラマンが見た“ある光景”
posted2025/06/26 17:25

王者エル・デスペラードに葛西純が挑んだIWGPジュニアヘビー級タイトルマッチ。6月24日、後楽園ホール
text by

原壮史Masashi Hara
photograph by
Masashi Hara
赤く染まったガラスにまみれた後楽園ホールのリングの上で、エル・デスペラードは笑いと涙が混ざった声で嬉しそうに言う。
「おかしいな。防衛したのは俺なのに、すごく負けた気がします」
自分が心の底から必要としている言葉を与えてくれる自身のアイドル・葛西純から渡されたのは、10年後の後楽園ホールへの招待状だった。
“異例中の異例”IWGPジュニアをかけたデスマッチが実現
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2019年の初遭遇から6年。“ならず者ルチャドール”エル・デスペラードと、“デスマッチのカリスマ”葛西純。あふれんばかりの互いへの尊敬と嫉妬――特別な関係性を築く2人の対戦はプロレス界きっての注目を集めるものになっていたが、今回の3度目のシングルマッチを「ラストシングル」とすることになった。
今年の1.4でIWGPジュニアヘビー級王者となったデスペラードだったが、3月に行われた3WAYマッチで葛西に直接3カウントを奪われてしまった。「負けたままでは終われない」と直訴して5月にタッグマッチが実現したが、そこでも葛西にフォールされ連敗。IWGPのベルトを巻く人間として、葛西を相手に防衛することでリベンジを果たすしかなくなった。
しかし、実現は難しかった。普段、新日本プロレスを見ているファンの中にはデスマッチを見たくない人も少なくない。また、1986年にIWGPジュニア王座が創設されてから、デスマッチ形式での防衛戦は行われたことがない。
デスペラードは新日本に後楽園ホールを押さえてもらい、特別興行のスタイルで大会を開催することで前者をクリアすることができた。しかし、王座戦となるかは話が別だった。どこまで認められるかは、ベルトの保持者ではなく管理者が決めることだからだ。
葛西は「スーパージュニアを優勝した男でも、IWGPジュニアヘビー級チャンピオンでもなく、純粋に、男の中の男、エル・デスペラードとサシでやりたいんだよ」とも言ったが、試合は王座戦として認められた。試合形式は「蛍光灯&ガラスボード+αデスマッチ」で、デスペラードの希望でバーブ佐々木レフェリーが裁くことになった。大会名は葛西が招待状を渡す形で決まり、昨年デスペラードが開催したデスペ・インビタショナルならぬ『デス・ペイン・インビタショナル』。