広岡達朗93歳が語った「老いること、死ぬこと…」書籍『正しすぎた人』作者はなぜ広岡に魅了されたのか？ 胸に響く「人間はいくつになっても勉強だよ」

「1978年のヤクルトと広岡」を描くために

「いつか、広岡達朗をテーマに一冊の本を書きたい……」

　いつの頃からか、そんな思いを抱いていた。そして、数年の月日をかけてようやく『正しすぎた人　広岡達朗がスワローズで見た夢』という本が完成した。発売から2週間が経過し、少しずつ「ついに完成したのだ」という実感を覚えつつある一方、「はたして、本当にこれでよかったのだろうか？」という思いも拭えない。それが現在の正直な気持ちだ。

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　球団創設以来、一度も優勝経験のなかったヤクルトスワローズをリーグ制覇、そして日本一に導いたのは1978（昭和53）年のことだった。そして、スワローズを去った後の82年、さらに翌83年、西武ライオンズでは連続日本一に輝き、「名将」の地位を不動のものとした広岡は、現在93歳である。

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　コロナ禍以前から断続的に話を聞き続けてきたものの、卒寿を過ぎた頃から急激に耳が遠くなり、長年連れ添った夫人を亡くしてからは足腰が弱くなるなど、体力の衰えが目立つようになった。近年では、「耳が遠いので、大きな声でゆっくりと話してほしい」と言われるようになり、かなりの声量でコミュニケーションを図っているものの、なかなか思うような意思疎通ができずにいる。

　彼に尋ねたのは、「1978年のスワローズ」であり、「1978年の広岡達朗」についてだった。78年のV1戦士である若松勉、松岡弘、大矢明彦もすでに70代後半を迎えている。「今、聞いておかなければ貴重な証言を聞き逃してしまうかもしれない」という焦りにも似た思いとともに、当時の選手たちに話を聞いて歩き、そこで得た証言を広岡に直撃して、事実関係を確認する。そんな作業を数年にわたって続けてきた。

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