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「ナゼ過密日程のほうが好成績?」エンゼルスのエースになった菊池雄星(34歳)の今…「スイーパーを辞めた」本人が明かしたターニングポイント
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笹田幸嗣Koji Sasada
photograph byGetty Images
posted2025/06/27 11:05
抜群の安定感でエンゼルスを支える菊池雄星(34歳)
元々、体の強さには定評のあった彼だが、背中、その広背筋は大きく、太く、逞しい。ここに彼の馬力が現れていると感じるが、米国や中南米系の体力抜群の投手であっても、先発翌日は体の節々が張り、リカバリー・メニュー以外はトレーニングを行わず、クラブハウスのソファでぐったりとしているという話をよく聞く。この話を菊池に伝えると彼はこう言った。
「僕は中4日でも5日でも翌日に体が張って動けないということがないんですよね。肩、肘、腰とかが張るということはないです。強いて言えば背中ですかね。背中はブレーキなんで。投げるということは肩がぶっ飛ぶわけですよ。それを背中で止めているわけです。だから背中が張ります」
だから、鍛えた。彼の背中が逞しい理由がわかった。
なぜ? スイーパーの投球を“辞めた”理由
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そして、6月に入ってからの好調にも明確な自己分析があった。
「少し腕の位置が下がってたりとか、開幕からしっくりこない中で、4、5月となんとか微調整をしながら、本来の形ではなかったんですけど、気持ち悪さを抱えながら投げていました。6月に入ってからやっと本来の形のボールが出てきたので、今はバッターに向かって勝負できているかなと思います」
それでも4、5月の2カ月で彼は防御率3.06の成績を残していた。だが、そのモヤモヤが晴れた。そこを教えてくれた。
「春キャンプで遊びのつもりで投げてみたスイーパーに対し、打者の反応が思いの外、良かったんです。それでシーズンでも投げていたんですが、スイーパーは腕の位置が下がるというか、下げて投げるんです。それでどんどん直球やチェンジアップ、スライダーも腕の位置さえも下がってしまった。しっくり来ない理由はここにあるのではと感じ、スイーパーを投げることを辞めたんです。そうしたら、自分本来の感覚が戻ってきた。腕の位置も戻りました」
23年シーズンから投手間で流行となったスイーパー。その要因のひとつは、打者スイングの軌道とスイーパーの描く軌道とが合わないからではないかと菊池は語る。だが、腕の位置を下げ、リリースポイントが頭の位置から離れるスイーパーは、今の菊池には合わなかった。

