革命前夜~1994年の近鉄バファローズBACK NUMBER
「やっぱりあのフォークはメジャーでも通用するんだ」野茂英雄を最も打った左打者・藤井康雄も「“浮き上がる”フォークはお手上げでした」
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喜瀬雅則Masanori Kise
photograph byTakahiro Kohara
posted2025/06/27 11:02
野茂から4本のHRを放ったオリックスの藤井康雄が体感した、「野茂がメジャーで通用した理由」とは
HR4本打ったのは自慢です
対野茂の打数を本塁打数で割った「本塁打率」で、藤井は清原の11.80を上回る「11.50」となり、この本塁打率で言えば、藤井は野茂相手にトップの本塁打率となる。
「野茂からホームラン4本、ある意味、自慢ですね。3本真っすぐ、1本はカーブ。フォークボールは打っていません。近鉄の攻め方っていうのが、例えばスライダーピッチャーだったら、膝元、内の低めに真っすぐとスライダーの出し入れ、っていう印象があるんです。そこから低いところが空振りゾーン。でも、それがちょっと甘くなると、逆にホームランボールになるんです。インローは弱いけど、そこからちょっと浮くと、低めは強いよと」
そのデータに基づけば、藤井の膝元から下へ落ちるフォークが来るのは自明の理だ。
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「そうですね、絶対に来ます。だから、その前の真っすぐをいかに仕留められるか。清原の10本なんか、これはある意味、清原になると真っすぐ勝負になる、っていうことですよね。これは意地と意地ですね。アキ(秋山)なんかも、やっぱり真っすぐ待ちでしょうね。フォークを捨てるというより、フォークも振ってしまう。多分、インコース高めとフォークボール。そのインコース高めが甘くなったのがホームランなんでしょうね」
野茂はカーブは二級品でしたね(笑)
フォークが来る。しかし、それを待ったとしても打てないだろう。そのジレンマを振り切るべく、ウィニング・ショットの宝刀が来る前に、真っすぐを狙って打つ。
単純明快なその絞り込みが、藤井の“攻略法の肝”だった。
「カーブが1球、ホームランであるんです。よく覚えています。でも失礼ですけど、あのカーブは二級品でしたね」と笑わせながら、フォークと同じ“縦変化”の落ちる変化球でありながら、その対処法には明確な違いがあったと藤井は強調する。

