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「野球部は1学年18人の少数精鋭」沖縄・エナジックスポーツ高の“秘密”「なぜノーサイン野球?」神谷監督70歳の哲学「SNSやYouTubeも否定しない」 

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松永多佳倫

松永多佳倫Takarin Matsunaga

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photograph byJIJI PRESS

posted2025/06/23 11:04

「野球部は1学年18人の少数精鋭」沖縄・エナジックスポーツ高の“秘密”「なぜノーサイン野球?」神谷監督70歳の哲学「SNSやYouTubeも否定しない」<Number Web> photograph by JIJI PRESS

春のセンバツで至学館に勝利したエナジックスポーツ。今夏の沖縄県大会でも有力校のひとつに数えられている

70歳・神谷監督の哲学「SNSやYouTubeも否定しない」

「今、野球部は1学年18名程度に限定している感じです。浦添商業や美里工業のときは100名以上の部員がいました。転勤時期でも部員がひっきりなしに入ってくる状態で、3年間、彼らを最後まで見てやれる保証もなかった。ここでは少数精鋭にすることで、細部にわたって責任を持って指導することができています」

 公立高校だと5年で転勤というのがひとつの目安となり、勤務期間が5年に近づくと選手集めにどうしても歯止めがかかってしまう。面倒を見るからには、3年間しっかり最後まで見たいというのが神谷の親心だ。

 70歳の老将・神谷だが、孫のような年代の生徒たちの考え方や、現在の情報環境のあり方にも理解を示した。

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「選手間同士で繋がっているSNSもあるし、情報過多は時代的にもう止められないでしょう。いろんな情報に対しても個人差があるから取捨できる子もいればできない子もいます。要は多くの情報から、どう学んでいくかだと思います。だから、たとえばフライボール革命とかいろいろバッティング理論が新たに増えていますが、それが全部ダメなのかっていえば合う選手もいる。蓬莱スイング(※元プロ野球選手・コーチの蓬莱昭彦氏が唱える打撃理論)にしても、この練習をしたおかげで打球が速くなった子もいるわけです」

 神谷は悟ったような表情で続ける。

「じゃあ、逆に全然タイミングが取れず1割も打てない子をどう指導していくのか。YouTubeでも修正の仕方とかいろんなものがアップされていますし、タブレットを通して『これで勉強したほうが良くなるのでは?』といったものは取り入れて、うまく使っていけばいいんじゃないのかと思いますね。時代の流れというのはもう止められない。巷に溢れている情報をどう上手く利用するか。後ろに戻らず、我々も進化しないとダメです。不易と流行です。変わらないものは変わらないし、変化に富むものはどんどん変わっていけばいい」

 情報に踊らされないようにと躍起になるのではなく、情報をいかに取捨選択して活用するか。フライボール革命も蓬莱スイングも悪癖になるから取り入れないと断じるのではなく、試す価値はあると考える。選手に合えばそれに越したことはないし、合わなかったらやめるだけ。合う・合わないは選手によって千差万別なのだから、その都度、臨機応変に考えればいい。とにかく否定から入ることだけはしない。神谷はごくシンプルな考え方で、若い世代と向き合っている。

【次ページ】 「ノーサイン野球」の“本当の目的”

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