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大谷翔平の舞台裏:ドジャース異聞BACK NUMBER
大谷翔平が投手復帰後に明かした“一つの誤算”…ドジャース番記者「今までにない異常な注目」そのウラで、大谷が充実感をのぞかせた“試合直後の7分間”
text by

斎藤庸裕Nobuhiro Saito
photograph byAFLO
posted2025/06/21 11:04
現地6月16日、じつに663日ぶりの登板となった投手・大谷翔平
試合前に現地で見た“異常な光景”とは?
試合前で言えば、最大の見所の1つはブルペン投球だった。記者席はバックネット裏で、ブルペンは左翼ポール際付近。普段はプレスルームで割り当てられた席から双眼鏡で観察することが多いが、この日ばかりは近くまで見に行こうと決めた。だが、周辺はファンでごった返し。仮に背伸びしても見えるはずがない。上からならば見えるのではと、三塁側2階席の端へと足を運んだ。すると、球場スタッフから移動を命じられ、やむなく断念し3階席へと向かった。通常の試合では、がら空きのはずのスペースに、ファンが階段に沿って一列に並んでいた。今までに見たことがない、異常な光景だった。
20メートルほどある高さから身を乗り出し、真下にブルペン入りした大谷を発見した。持参していた双眼鏡で柵の隙間から大谷の表情を確認した。まだ投げる前。座りながらチームスタッフと会話し、笑っていた。窮屈に見ていると、女性ファンから「前に入っていいよ」と言われた。だが、腰が引けた。長い間撮影を続けているファンとは裏腹に、高所恐怖症疑惑のある記者は数秒間、スマートフォンで写真撮影するのがやっとだった。試合前のスタジアムの熱狂を体感し、急いでプレスルームへ。開始10分前、いつもの指定席へ戻った。
663日ぶり登板で大谷が明かした“誤算”
左翼からバックネット裏まで走ったせいか、やや息が切れていたが、落ち着いて整えた。試合開始直前、興奮のあまり、観客は立ったままで大谷の投球に見入っていた。最初に歓声が大きくなったのは、プレーボールの第1球ではない。マウンドに上がり、準備のための投球練習の1球目。待ちわびていたかのように、「オォー」とざわめきが起こった。
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周囲の異常な盛り上がりと大歓声を背に、大谷はどんな気持ちでマウンドに上がったのか。「野手よりは緊張しました」。打者で出場する時以上に、感情もあらわになった。フォーシームの平均球速は99.1 マイル (約160キロ)で、最速は100.2 マイル (約161キロ)まで到達。「なるべく95~96(マイル)ぐらいで投げたいなとは思ってたんですけど、やっぱり試合のレベルでマウンドに行くと(強度が)上がってしまうのかなっていうのはあった」と、力みもあった。満員の5万3207人で埋まったスタジアム。マウンドからの景色についても「あんまり気にする余裕がなかった。(試合に)入りすぎているぐらいの感じだった」というほど、アドレナリン全開だった。

