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「将棋の才能がないとは…藤井聡太さんや羽生善治先生と比べてなんです」永瀬拓矢がホンネで語った「藤井さんを上回る」ための試行錯誤 

text by

大川慎太郎

大川慎太郎Shintaro Okawa

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photograph byShintaro Okawa

posted2025/06/22 11:03

「将棋の才能がないとは…藤井聡太さんや羽生善治先生と比べてなんです」永瀬拓矢がホンネで語った「藤井さんを上回る」ための試行錯誤<Number Web> photograph by Shintaro Okawa

永瀬拓矢は王将戦、名人戦に続き王位戦で絶対王者・藤井聡太に挑むことになる

 白星を挙げればモチベーションも上がるし、対局も増えるので経験値を積める。永瀬が熱望していた藤井との名人戦第6、7局だってあったかもしれない。

「勝たないといけないのは間違いない。ただそれは、私が目指しているところとは違う。葛藤はありますけど、今の私は何があっても残る方法でやっています。大事なのは今後につながること。明日があると思っているから、今日を一生懸命頑張って経験を積んで収穫を得て、明日からまた藤井さんに向かっていくんです」

 永瀬は決然と繰り返した。

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「藤井さんを上回りたいんです。そのためには強くならないといけない」

ファンからの贈り物を手に深夜の街へと消えた

 最強棋士を上回ることを目指して、永瀬は実力をつけようと奮闘している。そのうえで、名人戦の結果を踏まえて更に定跡を取り入れようとしている。以前にも採ったことがある手法だが、右往左往しているわけではない。経験を積んだ上での試行錯誤だ。

 幸運にも私は王位戦の主催紙の観戦記を担当している。盤側でじっくりと永瀬のチャレンジを凝視し、永瀬の生の言葉とともに結果をお伝えしたい。

 日付が変わろうとしていた。取材を切り上げて休憩室を出ると、永瀬は玄関のカウンターに向かった。そこには変わらず、ファンからの贈り物の紙袋があった。9日前の竜王戦ランキング戦の時よりも増えているように見えたが、躊躇せず両手に抱えると、永瀬は出口へ向かった。自動ドアが開いて歩みを進めた瞬間、紙袋ががさりと音を立てた。気に留めずに永瀬は深夜の街へと消えていく。外は暗闇に包まれていたが、永瀬の視線の先には明日がはっきりと映っているのだろうと思った。第1回からつづく〉

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「藤井(聡太)戦だけです。こんなことは」今が“最高レーティング”永瀬拓矢、名人・藤井への本音…なぜ負けても「強くなっている実感が」あるか
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