猛牛のささやきBACK NUMBER
「あかんわ…もう我慢できなかった」オリックス・森友哉が「涙のお立ち台」の後に語ったこと…希少がんと闘う大阪桐蔭の盟友へ届けた“覚悟”
text by

米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph bySANKEI SHIMBUN
posted2025/06/19 11:06
お立ち台で親友への思いが込み上げて言葉に詰まり、男泣きしたオリックス・森友哉
森は病室にも訪れて力づけてくれたと語る。
「手術後、一番に来てくれて。まさか本当に来てくれるとは思わなかったんで、感情が高ぶって、涙したんですけど……。『まだ泣くところでもないな』って友哉に言われて。『まだまだこれから前向いて生きていかなあかん』と、本当に支えてもらって、今があります」
この日はオリックスが毎年行なっている「大阪代表バファローズ高校」と銘打った試合で、2人の母校・大阪桐蔭高吹奏楽部が応援に参加しており、始球式もマウンド後方から演奏で後押し。「背中を押していただいた」と福森さんは感謝した。
森に火をつけた福森さんの底力
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過酷な闘病の中で始球式に臨んだ理由をこう語った。
「現状、僕は希少がんを患っていて、ステージ4で転移もしているんですけど、少しでも多くの人に、まだまだ限界なく、前向きにトライできるよということを伝えられたらいいかなと思いました」
新たな治療法を模索し、自身が前例となるために、クラウドファンディングも立ち上げた。
そんな福森さんの前向きさや始球式で見せた底力が、森に火をつけた。
4回裏の第2打席では二塁打、5回裏には1死一、三塁のチャンスで、ライト前に勝ち越しタイムリーを放った。この回一気に畳み掛け5点を奪ったオリックスが8-3で勝利し、森は宗佑磨、頓宮裕真と共にお立ち台に上がった。
「今日は大阪桐蔭のブラスバンドと、大翔が来てるんで、絶対に自分がお立ち台に立つと、強い気持ちで臨みました。もうめちゃくちゃ嬉しいです」
お立ち台で溢れた思い「大翔が…」
普段のお立ち台では淡々と受け答えをする森が、この日は明らかに高ぶっていた。
高校時代の青春の思い出を聞かれると、「いやほんまに、青春もクソもないです。しんどかったです」とこぼして球場の笑いを誘った。
そして最後にファンへのメッセージを求められると、「今日始球式で……」と突如、声を詰まらせた。
「ちょっと待ってください」と懸命に涙をこらえようとする森の背中を、隣にいた頓宮がさりげなくさすった。
「大翔が……、大翔が投げたんですけど、僕たちも、シーズン最後まで、負けない気持ちで、頑張ります。大翔も、負けないように、頑張ってください」
涙ながらに、グラウンドの端で見守っていた福森さんに視線を送りながら伝えた。福森さんはタオルで顔を覆い、肩を震わせて泣いた。



