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オリックス・九里亜蓮「もうエース級です」広島からFA移籍で今や大黒柱「うちにはなかなかいないピッチャー」チームメートも驚く“鉄腕”の流儀
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米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byJIJI PRESS
posted2025/06/16 11:02
タフで気迫溢れる九里のピッチングスタイルは先発投手陣に刺激を与えている
「中5日で行きたがる」鉄腕アレン
まさに“鉄腕”だ。入団会見の際に「200イニング登板」を今季の目標に掲げたが、その言葉通り、ここまで11試合に先発し、宮城大弥に次ぐ78回1/3を投げ、チームトップの5勝を挙げている(6月15日時点)。左の宮城と左右の両輪となってチームを支える大黒柱だ。
9回まで投げたがる九里に交代を説得する役割の厚澤コーチは、「すぐに降りたいピッチャーよりありがたいですよ」と苦笑する。
4月18日の日本ハム戦では、中5日で登板し、107球、1失点に収めて完投勝利を挙げた。厚澤コーチはこう明かす。
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「亜蓮は中5日で行きたがるんです。中5日が一番調整しやすいと言っているところを、チーム事情もあって、普段はあえて中6日にしてもらっている(苦笑)。彼は本当にすごいですよ」
「もっと上手くなりたい」飽くなき向上心
九里は、「中6日か5日かというのは僕が決めることじゃないので、言われたところで行くだけですが、(登板間隔が)伸びるよりは、僕は詰めてもらったほうが合わせやすい。5で回れと言われたら全然5で回れます。縮まる分には全然大丈夫という感じです。(間隔が開いて)体が軽くなりすぎるのがあまり好きじゃないので」と言う。
昨年までの広島での11年間で71勝を積み重ね、2021年には13勝を挙げ最多勝利投手にも輝いた実績の持ち主だが、変わること、変えることを恐れない。
今季は「ここまで入念にやるのは初めて」というワインドアップで開幕を迎えたが、その後もよりよいフォームを求め変化し続けてきた。
「まだ全然、自分のレベルは低いと思うので、いいピッチャーになるために、しっかり練習して、いろんなことを試行錯誤しています。日々勉強というか、もっと上手くなりたいという思いでいろいろ取り組んでいます。それがなくなってしまったら、もうそれ以上はないと思いますし、やっぱり野球をやっている以上、野球が好きだし、もっと上手くなりたいという気持ちがずっとあるので」
際立つ骨太なベテランの存在感
理想形やゴールは定めていない。
「『もっとこうなりたい』というのはありますけど、そこになったところで、たぶんまた『次はこうなりたい』と、どんどんいろんなものが見えてくると思う。だから、ゴールは決まっていないですし、決まらないと思います、ずっと」
変化を求めながらも、九里の中心を貫く太い芯は揺らがない。骨太なベテランの存在が、チームにどんな影響を与えていくのか楽しみだ。


