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オリックス・九里亜蓮「もうエース級です」広島からFA移籍で今や大黒柱「うちにはなかなかいないピッチャー」チームメートも驚く“鉄腕”の流儀
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米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byJIJI PRESS
posted2025/06/16 11:02
タフで気迫溢れる九里のピッチングスタイルは先発投手陣に刺激を与えている
昇天ポーズは、右腕を力強く掲げる杉本の本塁打パフォーマンス。それは、同学年で、かつて同じ東都大学リーグでしのぎを削った仲の2人が交わしていた約束だった。
「裕太郎が、『いつも1人で(ポーズを)やってて寂しい』と言っていたので、『じゃあ打った時には一緒にやろう』という話をずっとしていました」と九里。
杉本は、「(オリックスとの)契約が決まった時に『決まったわ』と電話がかかってきて、そういう話をしました。『一緒にやろうや』と言ったら、普通に『やるわ』みたいな感じでした」と振り返る。
数カ月で“チームを引っ張る”存在に
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その1週間前の広島戦でも、9回裏に杉本が本塁打を打った際に一緒に昇天ポーズを見せていたが、あの時は降板後だった。
今回は絶賛熱投中の5回。しかも直前の5回表に、2死ランナー二、三塁のピンチで京田陽太を空振り三振に打ち取り、鬼のような形相で拳を握ってベンチに戻っていた。そのわずか5分後の昇天ポーズに、意外なノリのよさと律儀な人柄がうかがえた。
開幕してまだ2カ月半ほどだが、新加入の33歳はチームに“馴染んでいる”というより、すでにグイグイと“引っ張っている”。
杉本が「もうエース級です。毎回7回8回まで絶対投げますし、すごい。カッコいいっす」と言うように存在感は抜群だ。
「みんなが勉強になっている」
「1球たりともムダにしたくない」が九里の口癖。マウンドでは、背中からメラメラと立ち昇る炎が見えそうなほどの気迫をまとい、1球1球に魂を込めて腕を振る。先に点を与えたとしても粘り強く立て直し、イニング数を重ねていく“イニングイーター”だ。
5月20日の千葉ロッテ戦も、雄叫びをあげながら114球を投げ込んだ。勝ち星はつかなかったものの、8回1失点で粘り、9回のサヨナラ勝ちに繋げた。サヨナラ本塁打を放った若月は試合後、自身の打撃の話はそこそこに、九里を讃えた。
「本当にすごいですよね。イニングを食ってくれるし、本当に気持ちが入っていたと思います。なんというか、うちにはなかなかいないようなピッチャーなので、本当に気持ちの部分だったり、練習の姿勢だったり、若いピッチャーも僕も、みんなが勉強になっていると思います。僕もいろいろと教えてもらいながら成長させてもらっています」



