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強すぎておもしろくない!? 「左回り無双」で完全復活のマルク・マルケスを止めるのは、実弟のアレックスか低迷中のバニャイアか?
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遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2025/06/11 11:08
アラゴンGPで圧勝し、スペイン国旗を掲げてウイニングランするマルク・マルケス
どのくらい強かったかを数字で表せば、昨年の優勝タイムを約35秒更新した。これはつまり23周のレースで1周につき約1.5秒タイムを短縮したことになる。しかも、レースを完全にコントロールしての状態であり、2位以下の選手がどんなに必死に走っても追いつくことはできなかった。
モーターランドアラゴンはマルクの強さが生きるサーキットである。得意とする「左回り」。ブラインドコーナーが多いチャレンジングなレイアウト。そして、ハイスピードからのハードなブレーキングが要求されるというマルク必勝の3要素が揃っている。どんなサーキットでもマルクの速さと強さは相当なものだが、こういう条件になるとまさに無双状態となる。
サーキットが左回りのレイアウトとなるアメリカでは、アメリカズGPで7勝、インディアナポリスGPで3勝、USGP(ラグナセカ)で1勝と、これまで15戦して11勝という圧倒的な数字を残している。
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ヨーロッパラウンドでも、ドイツGPのザクセンリンクでMotoGP8連勝(3クラスでは11連勝)という記録を持っている。20年にスペインGP(ヘレス)で大けがをしてから23年までは、怪我の影響やホンダのマシンの低迷もあって3年間でわずか3勝しか挙げていないが、そのうちの2つが左回りのサーキットだった。左回りのサーキットでは、マルクにハンディキャップを与えないと誰も勝てないのではないかと思える強さで、最強マシンのドゥカティを得たいまはまさに「鬼に金棒」の状態である。
もう一人のエース・バニャイアの低迷の理由
ホンダ時代のマルクは13年にMotoGPクラスにデビューして以来、史上最年少記録やチャンピオン獲得記録を樹立してきた。アラゴンGPではデビューシーズンに優勝し、以後5勝を挙げている。いま当時の記録を調べると、13年の優勝タイムは42分3秒459。ホンダ時代最後の優勝となった19年は41分57秒221。開催された時期や天候や路面コンディションなどの影響も加味すれば一概に比較できるものではないが、ホンダ時代の7年間にMotoGPマシンそのものは大きく進化していないということがわかる。
一方、この数年、圧倒的な強さを見せるドゥカティは、21年にバニャイアが41分44秒422のタイムで優勝。22年はエネア・バスティアニーニ、24年にマルケスが23年型で同じようなタイムで優勝しているが、今年の41分11秒という記録はだれもが驚くハイペースだった。

