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強すぎておもしろくない!? 「左回り無双」で完全復活のマルク・マルケスを止めるのは、実弟のアレックスか低迷中のバニャイアか?
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遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2025/06/11 11:08
アラゴンGPで圧勝し、スペイン国旗を掲げてウイニングランするマルク・マルケス
速かったバニャイアが今季低迷しているのは、マルクの加入が大きな要因になっているのは間違いない。多くの人が「ホンダ時代と同じでマルクがバイク作りの先頭に立つと誰も乗れなくなるマシンになる」と言う。確かにそういう一面はあるかも知れないが、実際にはマルケスが作るバイクが乗りにくいのではなく、マルクのズバ抜けた才能と走りに誰もついていけなくなるのが真実だと思う。
ドゥカティで2度タイトルを獲得しているバニャイアが今季思うような成績を残せていないのは、おそらく「マルクはどうしてあんな走りができる? なぜ? どうして?」という迷いがあるから。さらにフロントのフィーリングに課題を抱え、攻めきれないという状況もある。マルクのブレーキングからクリップにつくまでの速さは異常であり、バニャイアをしても及ばないのだ。
実弟とのチャンピオン争い
一方、傑作マシンといわれる24年型に乗るアレックスの好調についてマルクはこう語っている。
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「アレックスは開幕前のテストから速かったし、驚くことではない。24年型のポテンシャルを十分に引きだしているし、24年型にライディングスタイルが合っているのだと思う。アレックスのことは良く知っているし、今年の最大のライバルであることは間違いない。ペッコ(バニャイア)も次のイタリアでは速いし、まだ28レース(スプリント+決勝)残っている。ポイント差なんてすぐに変わるからね」
マルクはアレックスと32点差、バニャイアには93点差をつけているが、納得の行くレースばかりでないのも事実。「(絶対に勝てたはずの)アメリカとスペインのミスがずっと頭から離れなかった」というマルケスが絶対に勝ちたかったアラゴンGPだけに、もうミスは許されないという高い集中力をもってして「退屈なレース」にしてしまったのだろう。
13年にMotoGPクラスにデビューしてから今年で13年目のシーズン。20年の大けがを乗り越えたマルクは、マシンやタイヤが変わってもライディングスタイルを変えて最大限のパフォーマンスを引き出し、同じマシンに乗るライバルたちの自信を削いでいく。1993年生まれの32歳にして、7度目のタイトル獲得に大きく前進するアラゴンGPでの4勝目だった。

