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じつは“非情な監督”長嶋茂雄は巨人退任時「もう一人の長嶋を作りたい」と嘆いた…「わがままは許されない」超一流バッターでも送りバント
posted2025/06/08 06:00

監督・長嶋茂雄の言葉をひもとくと「明るいスーパースター」以外の素顔も見えてくる
text by

NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph by
Kazuaki Nishiyama
高橋由伸フィーバーに「マスコミ・チームですから」
<名言1>
その煩わしさのさいたるものが我が巨人軍じゃないでしょうか? しかし、これはもう、しようがないんです。
(長嶋茂雄/Number441号 1998年3月26日発売)
◇解説◇
長嶋茂雄はプロ野球選手として走攻守すべてでアグレッシブかつ抜群の勝負強さ、監督としては「メークドラマ」や「勝利の方程式」などキャッチーなフレーズで日本列島じゅうを引き付けた。1994年ペナントレース、同率首位で並んだ中日との最終戦――通称「10.8決戦」で勝利してリーグ優勝。この際のテレビ中継の平均視聴率は48.8%にも及んだ。
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そのスター性は現役時代も監督時代も唯一無二だった一方で、Numberに残された発言からは、指揮官として別の顔も浮かび上がってくる。
98年の開幕直前、ミスターが言及した対象は、高橋由伸だった。97年、東京六大学野球でリーグ通算最多ホームラン(23本)を放った高橋はその年のドラフトの目玉となり、逆指名で巨人へと入団した。高橋は甘いルックスだったこともあり、常軌を逸したフィーバーに。さらにプレー面でも松井秀喜、清原和博との「MKT砲」結成に期待が寄せられるなど、いちルーキーとしては考えられない報道量となっていた。
立教大学で当時のホームラン記録を樹立した長嶋は、高橋と同じく六大学のスターとして鳴り物入りで球界の盟主に加入したストーリーがある。だからこそ冷静にこうも語っている。
「ウチの場合、伝統に培われたと言うか、マスコミ・チームですから」
「わがままは許されない」五輪予選での采配
<名言2>
自分のチームにいるときとは違った役割をやってもらうことも、当然あります。わがままは許されないんです。
(長嶋茂雄/Number589号 2003年11月13日発売)
◇解説◇
指揮官・長嶋が冷徹な采配を見せたのは、巨人時代だけではない。オールプロの必勝態勢で臨んだアテネ五輪野球・日本代表でもそうだった。