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[阿吽の呼吸とは]達川光男「エースから届いた一通の手紙」
posted2025/06/08 09:01
text by

酒井俊作Shunsaku Sakai
photograph by
Shiro Miyake
一通の手紙が達川光男に届いたのは5年前のことだった。それは現役の頃、広島の正捕手としてコンビを組んだ北別府学が病床でしたためたものだった。かつてのエースが抱く思いに触れ、達川は胸を衝かれた。
「北別府が白血病になって、明日、入院するという時だったね。『僕はいままでひとりで勝ってきたと思っていたけど、勘違いでした。達川さんのミットをめがけて投げていたから勝てました。本当にありがとうございました。お礼のひとつも言えず、申し訳ございません。必ず病気に勝って戻ってきますので、それまで少し待っていてください。ご飯でもご馳走させてください』。そんな手紙をくれたんよね」
1980年代に広島の黄金期を築いたふたりが現役で最後にバッテリーを組んだのは'92年9月19日の中日戦である。広島市民球場で完投勝利を挙げたあの日から28年が過ぎていた。長い歳月を経て、北別府はなぜ達川に手紙を書いたのだろう。そして、達川はどのように受け止めたのだろう。
グラウンドを守る9人のなかで、投手と捕手だけが向かい合う。7月に70歳を迎える達川はその関係を「一心同体じゃね」と言った。18.44mのあいだにはふたりだけの濃密な時間がある。現役の頃、達川はそんな日々をすごすなかで捕手としての生き方を育んでいった。
こちらは雑誌『Number』の掲載記事です。
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