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大相撲PRESSBACK NUMBER
「朝青龍にプロ初黒星をつけた男」ハリウッド映画に出演した元力士が明かす18歳の朝青龍“超負けず嫌いな言い訳”「俺はさ! ちょっと熱があって…」
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雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph by写真提供:田代良徳
posted2025/06/07 11:03
元大相撲力士から転身し、ハリウッド映画にも出演した田代良徳。力士時代の四股名は東桜山勝徳
モンゴル風に言えば、飢えた蒼き狼といったところだろうが、田代はドラゴンボールの孫悟空のようだと思った。強敵に会えば会うほど「オラ、わくわくすっぞ」とテンションが上がる漫画の主人公に見えたのである。
朝青龍にプロ初黒星をつける
触らぬ神に祟りなし。ところが何の因果か、田代はそんな超がつく負けず嫌いにプロ初黒星をつけてしまう。
両者にとってデビュー場所となった1999年3月場所、その3日目、大阪府立体育館の土俵で田代は再び朝青龍と相対した。互いにここまでデビューから2連勝できている。
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田代は前相撲の経験を踏まえ、しっかりと策を練っていた。まわしを取らせたらまずい。組まずに突き放していくしかない。突き押しは田代が得意なスタイルでもあった。
作戦は的中。体格差も生かして朝青龍を押し出した。
やれやれ勝ててよかったと花道を引き揚げ、支度部屋に戻って風呂に入る。ところが、そこに反対側の支度部屋から朝青龍が鼻息をふんふんさせてやってきた。負けたことに腹を立て、よもや殴りかかってくるのかと思いきやそうではなかった。
「俺はさ! ちょっと熱があって具合が悪かったんだよ!」
相撲に負けたからといって、わざわざそんなことを言いにやってくる人間はいない。そんな性格だからこそ、のちに横綱になれたのかもしれないが、当時の田代はそんな ことは知らない。「うるせーモンゴル人だな。わざわざ言いにくるなよ。どんだけ負けず嫌いなんだよ」と心の中で呆れ返っていた。
この場所、田代は7戦全勝(幕下までは一場所 日間で7番しか相撲を取らない)で序ノ口優勝を決めた。朝青龍は6勝1敗だった。番付がすべてとされる角界でも同期のよしみは特別。田代と朝青龍の付き合いはこの先も長く続いていくことになる。
<続く>
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