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「朝青龍にプロ初黒星をつけた男」ハリウッド映画に出演した元力士が明かす18歳の朝青龍“超負けず嫌いな言い訳”「俺はさ! ちょっと熱があって…」

posted2025/06/07 11:03

 
「朝青龍にプロ初黒星をつけた男」ハリウッド映画に出演した元力士が明かす18歳の朝青龍“超負けず嫌いな言い訳”「俺はさ! ちょっと熱があって…」<Number Web> photograph by 写真提供:田代良徳

元大相撲力士から転身し、ハリウッド映画にも出演した田代良徳。力士時代の四股名は東桜山勝徳

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雨宮圭吾

雨宮圭吾Keigo Amemiya

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写真提供:田代良徳

 無名の大相撲力士が、VOGUEでファッションモデルデビューを果たし、さらにインド映画「SUMO」の主役級に大抜擢され、ついにはハリウッド映画出演へ! 現在は相撲業相撲特化型芸能事務所「SUMOエージェンシー」を運営する田代良徳の不可思議な人生を描いた『SUMOOO!! 流れ流れてハリウッド』(雨宮圭吾・著/文藝春秋刊)が発売された。書籍の中から田代の力士時代、朝青龍との出会いを描いた項を抜粋して紹介します。<全2回の前編/後編へ>

朝青龍とのファーストコンタクト

 1999年1月場所で入門した新弟子は田代を含めて11人いた。

 両国国技館内の相撲診療所で行われた新弟子検査。コイツらと競い合っていくんだなあと周りの顔ぶれを見回していると、均整の取れた体に坊主頭でやけに眼光鋭いやつがいる。

 名前をドルゴルスレン・ダグワドルジと言った。

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 明徳義塾高に留学していた18歳のモンゴル人で、のちに第68代横綱・朝青龍となる男である。

 田代は学生相撲の結果などをマメにチェックするタイプではなかったので、その名前に聞き覚えはなかった。明大の後輩に「ドルジって強いの?」と聞くと、「強いですよ。インターハイで3位になってますからね」と教えてくれた。

 田代がその実力を初めて体感したのは前相撲(まえずもう)の時だ。前相撲とは、本場所中の朝一番に組まれる新弟子同士のエキシビションマッチのようなもの。原則3勝を挙げていった者から順に、次の場所の番付にしこ名が書き加えられる。勝ち負けはつくものの、まだデビュー前という扱いで公式記録には残らない。

 田代は二番相撲で朝青龍と対戦した。

 今でこそモンゴル人力士の存在は当たり前のものとなり、モンゴル相撲などもよく知られるようになったおかげで、四つに組み合った時の彼らの強さは誰もがわかっている。ただ、この頃はまだモンゴル人力士の数も少なく、うかつに組み合っては危ないというセオリーもさほど周知されていなかった。

「こいつ、強え…」

 田代は不用意に朝青龍にまわしを与えてしまった。インターハイ3位といっても相手は高校生だろうという油断もあった。安全策として、動きの速い相手を捕まえてか ら、ゆっくり料理しようと考えた。ところが次の瞬間、田代はぶん投げられていた。

 土俵に転がされながら思った。こいつ、強え......。面食らうような強さだった。それが朝青龍とのファーストコンタクトだった。

【次ページ】 驚くほどの「負けず嫌い」

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