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ボクシング拳坤一擲BACK NUMBER
「世界王者になっても職質された」「山手線にベルトを忘れ…」“超個性派ボクサー”小堀佑介の天然伝説「じつは日本人で3人だけ」ライト級世界王者の偉業
text by

渋谷淳Jun Shibuya
photograph byMikio Nakai/AFLO
posted2025/05/27 11:04
2008年5月19日、日本人3人目のライト級世界王者となった小堀佑介(当時26歳)
山手線にチャンピオンベルトを忘れ「電車を止めて!」
日本王者のベルトを紛失した失態も報じられた。日本タイトルを獲得して六本木で祝勝会を開いてもらい、朝まで飲んでタクシー代までもらった帰りだった。小堀はタクシー代を懐に入れ、山手線で帰宅するのだが、泥酔して電車の中で眠ってしまう。もう「何周したか分からない」くらい山手線に乗ったあと、起きて慌てて電車から降りるとき、ベルトを置き忘れてしまったのだ。日本チャンピオンベルトは持ち回りで、小堀の私物ではない。新王者はパニックとなり、巣鴨駅の駅員をつかまえて騒ぎ始めた。
「電車を止めてくれ! ってくらいに食ってかかりました。1時間くらいして無線が入って『落とし物が池袋駅で見つかりました。チャンピオンベルトです』と聞こえてきた。駅員さんにお礼を言って池袋駅に向かったんですけど、シラーっとしてました。さんざん悪態ついたあとだったので(笑)」
こうしたエピソードは枚挙にいとまがないのだが、後編ではボクサー小堀が誕生するまでの物語と、現役引退後の“放浪時代”を紹介したい。それは実に小堀らしく、脱力とド根性が同居するストーリーだった。
<続く>

