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「インドを放浪し、歌舞伎町でボコボコにされ…」元世界王者・小堀佑介43歳が明かす“引退後の迷走”「やれることがなにもない…」今は名門ジム会長に

posted2025/05/27 11:05

 
「インドを放浪し、歌舞伎町でボコボコにされ…」元世界王者・小堀佑介43歳が明かす“引退後の迷走”「やれることがなにもない…」今は名門ジム会長に<Number Web> photograph by Tadashi Hosoda

現在は名門・角海老宝石ボクシングジムの会長を務める小堀佑介(43歳)

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渋谷淳

渋谷淳Jun Shibuya

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Tadashi Hosoda

 角海老宝石ジム現会長の小堀佑介は2008年5月19日、日本人3人目のライト級世界王者となって日本ボクシング史にその名を刻んだ。乏しいアマチュア経験からプロ入りした“叩き上げボクサー”は、いかにして世界タイトルを手にしたのか。本人の証言から、波乱万丈のボクシング人生に迫る。(全2回の2回目/前編へ)

のちの世界王者が“受験勉強”を断念した日

 強打のホセ・アルファロを3回で倒し、WBAライト級王座に就く8年ほど前、小堀は高校3年生でプロのリングに初めて立った。このころは世界チャンピオンになれるとも、なりたいとも思ったことはなく、そもそもプロボクサーになったことでさえ、どこか「成り行き」という側面があった。

 中学時代に辰吉丈一郎の試合を見てボクシングに興味を抱き、千葉県内のジムに中学2年生で入門したものの、ジムが遠かったこともあり半年で断念。高校進学後は吹奏楽部に入ってコントラバスを演奏した。ところが全国大会に出場するほどのレベルだったため、1年生の夏にギブアップして部を去った。

 さて、これから何をするか。頭にあったのはボクシングだった。一度は辞めたジムに再び通ってトレーニングに励み、高校生の大会に出場した。3年生の最後の夏、インターハイ千葉県予選決勝で敗れる。これでボクシングは終わりになるはずだった。

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 小堀は父親が県庁職員、母親が元教師、3人兄弟の次男という家庭環境で育った。兄は国立大学に通い、弟はのちに医者になった。高校で部活動を引退すれば大学受験の準備に入る。それが当たり前の家庭だった。決して勉強の出来がいいとは言えなかった小堀は兄の大学の図書館に通って受験勉強に励むことになった。

 夏休み、毎日1時間かけて大学の図書館に通った。ある日、たどり着いた図書館で「休館」の二文字が目に飛び込んできた。心の中で何かが切れた。怒り心頭で家に帰り、母親に「受験は辞める」ときっぱり告げた。

【次ページ】 高校3年生で一人暮らしも「家賃が払えなくなり…」

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