「世界王者になっても職質された」「山手線にベルトを忘れ…」“超個性派ボクサー”小堀佑介の天然伝説「じつは日本人で3人だけ」ライト級世界王者の偉業 

3回TKOで日本人3人目のライト級王者に

　2回、互いのパンチが交錯する中、アルファロの左フックが決まり、ぐらついた小堀が追撃を受けると、最後は右ストレートを食らって背中からコーナーポストにもたれるようにダウンした。

　しかし、これでひるまないのが小堀だ。ダウン後に左フックを決め返して盛り返す。そして3回だった。小堀は敢然とアルファロに向かっていくと右クロスで圧力をかけ、得意の左フックでダウンを奪い返す。アルファロのダメージは甚大だ。小堀は立ち上がったアルファロを攻め立てラッシュ、アルファロが力なくロープにもたれたところで主審が試合を止めた。TKOタイムは3回2分8秒だった。

レフェリーが試合をストップした瞬間。小堀佑介は喜びを爆発させる　©JIJI PRESS

　日本人3人目のライト級世界王者が誕生した。普段は感情をあらわにしない小堀が拳を掲げてリングを走り回り、苦楽をともにしてきた田中トレーナーと抱き合う。そしてリングに上がった萩森氏ともがっちり抱擁を交わした。

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「試合の中身はよく覚えていないんです。ただ勝った瞬間、うれしかったのは覚えています。かかった費用のプレッシャーが重くて、もう次はいいかなと思っちゃいました……」

「世界を獲ったあとにも職質されました」

　1000人規模の小さな会場、テレビ中継がCSだけだったこともあり、世間的な注目度は決して高くはなかった。それでもボクシング界で小堀の偉業は大いに認められた。“天然”とも評されるとぼけたキャラクターも愛された。口を開けば面白いエピソードがポンポン飛び出してくるのだから、ボクシング担当記者にとってこれほどありがたい存在はなかった。

世界戦後の一夜明け会見で　©JIJI PRESS

　大きく話題になったのが「職務質問」である。世界挑戦を目前にしたある日、大塚の街中で職務質問を受けてムッとしたというエピソードだ。これは本当のことだった。

「職質は死ぬほどされました。当時、大塚は薬物の聖地だったみたいで、自分は減量で痩せていて、坊主でジャージーでしたから、100パーセント職質です。前の日に職質してきた警察官が次の日もまた職質してくる。世界を獲ったあとにも職質されて、頭にきてチャンピオンベルトを見せたんですけど、特に反応はなく、スルーされました（笑）」

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