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ドジャース1年目、佐々木朗希と同じく苦しんだ山本由伸だが…「60点からメジャー級エース」になった3大要因〈千賀滉大とCY賞争い〉
posted2025/05/28 06:02

好投続きの山本由伸。自身メジャー初の2ケタ勝利にとどまらず、日本人初のサイ・ヤング賞も狙えるか
text by

広尾晃Kou Hiroo
photograph by
Icon Sportswire/Getty Images
関西在住の筆者にとって、オリックスの大エースだった山本由伸は、最も馴染みのある投手の一人だった。
シャープな中継ぎ投手としていい働きをしていた背番号「43」時代。先発に転向し「18」を背負ったエースとなり、3年連続沢村賞――と無双になるまで、一人の投手が実力と自信をつけて「のし上がっていく」のを目の当たりにした。チームもリーグ3連覇を果たした。
山本の登場曲『Frontier』が流れると、スタジアムの観客は「今日は特別の日だ」と思ったものだ。それが今、ドジャースタジアムに継承されていると思うと感慨深いものがある。
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山本は最速159km/hを誇るフォーシームとストライクゾーンに投げることができるスプリッターが持ち味だが、これに大きな軌道を描いて絶妙のゾーンに落ちるカーブがいいアクセントになっていた。このカーブは、左右こそ違うが背番号「18」の後継者、宮城大弥に受け継がれている。
メジャー1年目は60点の出来だった
まさに「日本ではやることがなくなって」山本は昨年、満を持してMLBに移籍した。12年総額3億2500万ドル(約465億円)でドジャースとメジャー契約。オリックスには5062万5000ドル(約72億円)、オリックス全選手の年俸総額の2倍以上の譲渡金が支払われた。
とはいえ、1年目の2024年は順風満帆だったわけではない。
3月21日、韓国で行われたパドレスとドジャースの開幕第2戦、『Frontier』が流れる中でメジャー初マウンドに上がった山本は、パドレス1番ザンダー・ボガーツにいきなり左前打を打たれ、2番タティスJr.に死球、そして3番クロネンワースに三塁打を打たれ、あっさり2点を先制された。
「日本とは勝手が違う」
そんな空気感は、今年の佐々木朗希とそっくりだった。
山本はこの後立ち直って6勝を挙げるが、6月に上腕三頭筋の怪我でIL(負傷者リスト)入り。終盤に復帰してポストシーズンでは活躍したとはいえ、1年目の山本は点数で言えば「60点」というところか。
すでに昨季と並ぶ6勝…要因はどこに?
現地5月26日時点で、山本由伸の今季成績は以下の通り。
〈山本由伸/ドジャース〉 ※投手のカッコ内は(球数-ストライク)
11試6勝3敗0S 64回38安5本20球75振 責14率1.97
5月20日Dバックス戦7回1安0本2球9振 責0(110-62)
5月26日ガーディアンズ戦6回3安0本2球7振 責2(88-55)〇
ここまで防御率1点台、ガーディアンズ戦で昨季と並ぶ6勝目を挙げるなど好投が続く。その要因は、26歳の山本が様々な面でメジャーに適応したところにあるのではないか。
まず、「自分の責任範囲」についての認識である。