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ドジャース1年目、佐々木朗希と同じく苦しんだ山本由伸だが…「60点からメジャー級エース」になった3大要因〈千賀滉大とCY賞争い〉
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広尾晃Kou Hiroo
photograph byIcon Sportswire/Getty Images
posted2025/05/28 06:02

好投続きの山本由伸。自身メジャー初の2ケタ勝利にとどまらず、日本人初のサイ・ヤング賞も狙えるか
オリックス時代は、エースの自覚が極めて強く救援陣の負担を減らすために100球を超えても投げ続けることが多かった。また、先制点を許さないために最初から飛ばすことが多かった。
昨年はそうした「気負い」が、息切れにつながった印象があった。しかし今年の山本は自身の役割をQS(6回以上投げて自責点3以下)と明確に認識しているように映る。自身の持ち場を理解し、その中で全力を尽くす。1、2点失うことも想定して、ペース配分を考えるようになった印象だ。今季は11試合で7試合がQS、これはナ・リーグ5位タイ。3試合が5回2失点以下である。
キレのある速球、変化球でも適応
さらに山本はMLBのボールやマウンドに適応した。フォーシームの球速は平均154km/h前後だが、2200回転を超すキレのある速球がストライクゾーンに決まっている。
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変化球でも適応力を感じる。山本の強みの1つは、フォーシームと同じ軌道から鋭く落ちるスプリッターだった。しかし今季は、これを見逃されるケースが増えていた。そこで5月ころからNPBではそこまで投げなかったカッターを使うようになった。加えて決め球の一つだったカーブが絶妙の働きをしている。26日のガーディアンズ戦でも、山本のカーブは打者がボールと見逃した高さから急落してストライクゾーンぎりぎりに収まった。奪三振率も上昇傾向だ。
2年目にして山本は沢村賞投手から、ドジャースだけでなくMLB全体のエース級投手に変貌したといってよい。防御率1.97は、後述するメッツ千賀滉大についでナ・リーグ2位だ。日本人投手2人によるサイ・ヤング賞争いも、夢ではない。
千賀から先頭打者弾…大谷がもう20発間近
以下、現地5月19日から26日までの成績とともに、大谷翔平ら日本人メジャーリーガーの成績を振り返っていく。
〈大谷翔平/ドジャース〉
52試210打62安19本33点11盗34球59振 率.295 OPS1.040
7試合28打5安3本3点1盗 4球8振 率.179
5月19日ダイヤモンドバックス戦 4打1安1本1点0盗 0球0振
5月20日ダイヤモンドバックス戦 4打1安0本0点1盗 1球0振
5月21日ダイヤモンドバックス戦 4打0安0本0点0盗 0球2振
5月23日メッツ戦 5打1安0本0点0盗 1球1振
5月24日メッツ戦 4打0安0本0点0盗 0球3振
5月25日メッツ戦 4打1安1本1点0盗 0球1振
5月26日ガーディアンズ戦 3打1安1本1点0盗 2球1振
今週はわずか5安打だったものの、そのうち3本が本塁打。しかも2本が千賀から放った一打を含む先頭打者本塁打。好調を維持して大好きな6月に突入しそうだ。なお投手としては26日に手術後初のライブBP(実戦的な投球練習)のマウンドへ。最速156km/hを記録した。
〈鈴木誠也/カブス〉
50試201打55安14本49点1盗20球60振 率.274 OPS.910
7試合28打13安3本10点0盗 5球5振 率.464
5月19日マーリンズ戦 4打1安0本0点0盗 1球1振
5月20日マーリンズ戦 5打3安1本4点0盗 1球0振
5月21日マーリンズ戦 4打1安0本0点0盗 0球2振
5月23日レッズ戦 5打3安1本3点0盗 0球1振
5月24日レッズ戦 3打1安0本0点0盗 1球0振
5月25日レッズ戦 4打3安1本3点0盗 1球0振
5月26日ロッキーズ戦 3打1安0本0点0盗 1球1振
今季の鈴木は、得点圏(RISP)では7本塁打39打点、打率.373と無類の強さ。49打点はナ1位。大谷に続き日本人2人目の「打点王」にむけて走っている。
〈ラーズ・ヌートバー/カージナルス〉
52試205打49安7本25点4盗32球43振 率.239 OPS.734
6試23打3安0本1点0盗 1球9振 率.130
5月19日タイガース戦 4打2安0本1点0盗 0球1振
5月20日タイガース戦 5打0安0本0点0盗 0球2振
5月23日Dバックス戦 3打0安0本0点0盗 1球0振
5月24日Dバックス戦 3打1安0本0点0盗 0球2振
5月25日Dバックス戦 4打0安0本0点0盗 0球1振
5月26日オリオールズ戦 4打0安0本0点0盗 0球3振
1番左翼での出場が続いているが当たりが止まった。外野手としては優秀だが打撃の浮き沈みが激しい。
防御率1位の千賀に難点があるとしたら
山本以外の投手についても見ていこう。先発として菅野、千賀、菊池が安定した投球を見せている。