東京六大学野球“9年ぶり”ノーヒットノーランはなぜできた？ 偉業達成の早大エース…ベテラン記者が見た快挙のワケは「高校時代の2倍」の太モモ？ 

　見るたびに驚くのが、伊藤投手の大腿部の充実だ。ちょっと大げさにいえば、高校時代の2倍もの太さに達しようか。日ごろの地道な走り込みやトレーニングの成果が見てとれる。そして、浮いたボール、抜けたボールがないのは、鋭い腕の振りが生み出す「遠心力」に負けないだけの腕力と握力。こいつがあるからだ。

　低め集中、低めのコントロール。日ごろの精進の賜物だろう。

「最後まで150キロ」の投手じゃない

　そして、なにより、「ミスター・ギアアップ」……投げる出力の強弱を、こんなに巧みに操れる投手は見たことがない。

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「自分、最初から最後まで150キロが投げられるピッチャーじゃないって、自分がいちばんよく知っていますから」

　サラッと、そんなことを言ってのけたことがあった。

高校時代からさらに鍛えあげられた驚異の大腿部　©JIJI PRESS

勝負所では驚異の「ギアチェンジ」

　弱音に聞こえる人もいるかもしれないが、そのフラットなもの言いに「わかっているヤツだなぁ」と安心したものだ。

　いたずらに、強く投げようとし過ぎない。速く投げようとし過ぎない。

　その代わり、「ここが勝負どころ！」と踏んだら、一気に戦う「牙」がはえて、急激にギアを上げる。スピードも150キロ前後に上げ、カットボール、チェンジアップ、スプリットは地面に突き刺さるような「鋭利な刃物」と化す。

　いちばん信頼できる「空振り」を奪いにいくから、ノーヒットノーランに封じた明治大戦の9イニングでも、3つ目のアウトを三振で締めくくったのが5度。2連続奪三振が3度もあって、6回には、しぶとい明治大上位打線から立て続けに3三振奪ってみせた。

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