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マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
東京六大学野球“9年ぶり”ノーヒットノーランはなぜできた? 偉業達成の早大エース…ベテラン記者が見た快挙のワケは「高校時代の2倍」の太モモ?
text by

安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byJIJI PRESS
posted2025/05/26 06:01

東京六大学野球で史上25人目となるノーヒットノーランを達成した早大4年の伊藤樹。大学進学後、下半身のフィジカルアップが顕著だという
いつも淡々、いつも飄々…の強さ
早稲田大・伊藤樹投手の「凄み」を実感するのは、こういう場面だ。
バッタ、バッタと三振を奪っても、わめくこともなければ、相手を威嚇するように怒鳴り散らすこともない。
いつも淡々、いつも飄々。音もなく打者をなで切り、せいぜい小さなガッツポーズを見せるぐらいで、静かにダグアウトに戻っていく。
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「1球1球、相手の様子を見極めながら、打ってもヒットにならないボールを、大事に、大事に。真ん中に入っても打たれないボールは、自分、持ってないですから、それしかないんです。ムダに力み過ぎずに、丁寧に、丁寧に、気持ちを込めて投げるだけです」
ノーヒットノーラン翌日の明治大第3戦、同点にされた直後の9回途中からリリーフのマウンドに上がった伊藤投手。打者4人をパーフェクトに抑えると、タイムリーも放ち、優勝戦線に踏みとどまる推進力になった。
これこそが「ミスター・エースピッチャー」。
頭が下がる。
実るほど、頭を垂れる稲穂かな。六大学の神宮の大舞台でプレーできるようになっても、おごることなく、一投一打に真摯に向き合う。
「一球入魂」の精神を、誰にでもわかるように、見事に体現してくれたのが、伊藤樹投手の快投だった。
最大4校にリーグ優勝の可能性が残る、近年まれに見る混沌の東京六大学。
このあと再び、神宮のマウンドが伊藤樹投手の「エースの矜持」に支配されるのは、31日からの早慶戦……そのときである。

