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ぼくらのプロレス(再)入門BACK NUMBER
生放送でバラされた「おまえ、平田だろ!」プロレス史に残る“珍事件”、本人が明かした全真相…なぜ平田淳嗣は、それでもマスクを脱がなかったのか?
text by

堀江ガンツGantz Horie
photograph byAFLO
posted2025/05/17 17:01
平田淳嗣本人が明かした、「おまえ、平田だろ!」事件の真相《全2回の後編》
「生放送であんなことを言われた時はビックリしましたよ」
“マシン”への変身は平田自身が強行したものだった。そのため当初は怪覆面の“設定”がまとまっておらず、「ストロングマシン」という名称は、マネージャーのワカマツが記者に囲まれた際、「この男は人間じゃない。ストロングなマシンなんだ!」と、アドリブで発言したことから定着。顔全体が覆われた斬新なマスクのデザインは、平田自身が楳図かずおの漫画『笑い仮面』をヒントに、自ら発注したものだ。
その後、マシーン軍団は4号まで増殖。悪のマネージャーに操られる同じデザインのマスクを被った無表情な“殺戮機械”という設定は、新日本のストロングスタイルを支持するファンからは批判の対象となったが、目新しさもあってテレビの視聴率的には貢献。選手大量離脱でピンチに陥っていた新日本を救ったこともたしかだった。
マシーン軍団の“中身”は無名レスラーの寄せ集めだったが、徐々に平田のマシン1号だけは実力者ぶりが際立ち、85年からは藤波とのライバルストーリーが始まる。「おまえ、平田だろ」発言は、そんな中で飛び出したものだった。
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「生放送であんなことを言われた時はビックリしましたよ。おそらく既成事実を作って、素顔で本隊に戻そうとしたんでしょうね。だけど、俺からしたら『ふざけんな』って感じでした。アメリカ行きが決まっていたのに、『キン肉マン』をやれってことでダメにされて、それで意地になってマスクを被り続けてヒールをやっていたわけですから。もう会社に振り回されるのは嫌だったんです」
プロレスラーとしての意地
「おまえ平田だろ」事件の3カ月後、マシンは新日本を離脱し、ヒロ斎藤、高野俊二とともにカルガリー・ハリケーンズを結成。長州率いるジャパンプロレス、そして全日本プロレスへと戦場を移した。
あの時、マシンがマスクを脱いで新日本正規軍入りしていたら、藤波に次ぐ本隊のトップ選手として売り出されていたかもしれない。しかし、さんざん会社に振り回され続けたマシンは、“機械”としてではなく感情のある人間として、社命に背いてでもスーパー・ストロング・マシンを続ける決断をした。それはプロレスラーとしての意地以外の何物でもなかっただろう。《前編も公開中です》

