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「こんな歓迎を受けるなんて…」井上尚弥ラスベガス興行は成功だったのか? 米在住記者が感極まった“ある瞬間”「動員8474人は少なくない」
text by

杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byHiroaki Finito Yamaguchi
posted2025/05/13 11:06
4年ぶりにラスベガスのリングに帰ってきた井上尚弥(32歳)
もっとも、事情を理解するメディア、関係者の間ではだいたい8000〜1万人くらいの観客数ではないかという予想は事前から出されていた。そして、約8500人という結果はまったく悪いものだとは思わない。カネロ、ジャーボンテイ・デービス、ライアン・ガルシアといった一部の人気ボクサーたち、あるいは好カードが組まれた際のヘビー級王者たちを除けば、地元アリーナではなくアメリカ大都市圏の大会場に1万人前後の観衆を動員できる現役ボクサーは数多くいるわけではないからだ。
階級は違えど、立ち位置的に井上と被りのあるゴロフキンがニューヨークのマディソン・スクウェア・ガーデンのメインアリーナで初めてメインを張った2014年のダニエル・ギール戦とも共通点がある。その際の観衆は8572人。1万を超える集客力を持つ呼び物になるには、数を重ね、段階を踏んでいく必要があるということだ。
日本を拠点に戦ってきた軽量級王者
特にラスベガスの場合、ビッグファイトの際には多くのファンが近隣の街からその週末を過ごすために集まってくる。井上はすでにボクシング界ではリスペクトを集めるスターになったが、カネロやパッキャオのように多くのカジュアルなファンがベガスまで足を運ぼうと考える存在にはまだなっていない。これまで日本を拠点に戦ってきた軽量級王者であれば、それは当然である。
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それにもかかわらず、しかも同じ週末にサウジアラビアでカネロ、ニューヨークでガルシアが登場する興行が行われたという難しい条件まで考慮に入れれば、8000人以上のファンを動員したことは十分に合格点といっていい。

