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血まみれの蛍光灯デスマッチを超えて…葛西純の願い「純粋にシングルでエル・デスペラードに勝ちたいんだよ」IWGPジュニア“異例の防衛戦”は実現するのか?
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原壮史Masashi Hara
photograph byMasashi Hara
posted2025/05/05 17:04
5月2日、FREEDOMSのリングで向き合った葛西純とエル・デスペラード
ルチャドールかつデスマッチファイターで、デスペラードが「先生」とするパートナーのジャックでも、「ルチャドールとしてのジェラシーがある」と言った。自分を強く知らしめるチャンスとして、タッグを組んだデスペラードとも間接的に戦っていた。
「あの人を超えたい」「自分がトップになる」。その連鎖でプロレスは続いてゆく。
相手を認めれば認めるほど「尊敬と嫉妬」は強くなり、それが自分を強くする。
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もちろん、勝敗を越えたところに生まれる感情であるとはいえ、勝敗によって一層強くなるものでもある。
「IWGPをかけたデスマッチ」は実現するか?
3月のクレイジーフェストで葛西に3カウントを許し、「負けたままでは終われない」と直訴して実現したこの日の試合。「尊敬と嫉妬でいくらでも強くなれる」と語る狂猿から直接3カウントを奪われてしまったデスペラードは、IWGP王者としての負けられない思いが限界突破しそうだ。それに、2022年9月のシングルを前に約束していた「スーパージュニアを優勝してから戦う」をまだ果たしていない。
しかし、IWGPのベルトを持ってデスマッチをすることや、そこにベルトをかけることの難しさについても、王者としてわかっている。ここ数年の足跡と、今のデスペラードの発言力ならば、やろうと思えば、ファンのとてつもなく大きな声を味方につけて会社に認めてもらうこともできるだろう。クラーク・コナーズとの防衛戦がハードコアマッチとして新日本本戦の後楽園のメインを任されたように、団体内での前例は作られた。
それでも、新日本のファンの中には血を見たくない人もいる。外のリングでのデスマッチを防衛戦にするとなると、やはり難しい話になってくる。デスマッチを尊敬しているからこそ、そのことを誰よりも強く理解している。
そんなデスペラードの気持ちを「ものすごく嬉しいよ」と受け取った葛西は「オレっちが戦いたい男は、スーパージュニアを優勝した男でも、IWGPジュニアヘビーのベルトを持ってる男でもない。純粋に、エル・デスペラード、シングルでお前に勝ちたいんだよ」と返答し、会場を痺れさせた。
試合後、葛西はバックステージでコメントを残すと、受け取った花束から薔薇を5本返却。花言葉は「あなたに会えてよかった」だという。スタッフを通じて受け取ったデスペラードは「敵わねぇな」と笑った。
葛西純とエル・デスペラード。2人の「尊敬と嫉妬」は、また濃くなった。



