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菅野智之メジャー、戸郷翔征不調の巨人新エースは「TJ手術明け、大事に使われた」山崎伊織…セ新35回連続無失点だけでなく「与四球4」も凄まじい
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広尾晃Kou Hiroo
photograph byJIJI PRESS
posted2025/05/06 11:02
セ新記録となる無失点記録を樹立した巨人・山崎伊織
たとえば2024年は中日の草加勝(亜細亜大)、阪神の下村海翔(青山学院大)、ヤクルトの西舘昂汰(専修大)とドラ1投手が3人もトミー・ジョン手術を受けた。
この背景には、アマチュア球界の「球速アップ」があると思われる。「ラプソード」「トラックマン」などの弾道測定器がアマ球界にも導入され、より球速(投球強度)がある速球、変化量が多い変化球を投げるためのフォームを自身で編み出すことが可能になってきて、その結果として肘への負荷が強まっていると推測されるのだ。
ドラフト同期の選手が次々と一軍デビューする中、山﨑は21年は二軍も含めて登板なし。そして22年3月26日、開幕第2戦の中日戦に先発でプロ初登板。二軍戦を経ずにいきなり一軍で先発という思い切ったデビュー戦になったが、6回4被安打1被本塁打自責点2という好投を見せた。
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この年は97.1回を投げて5勝。23年は149回で10勝、24年は147.1回で10勝と、先発投手として活躍してきた。この間、ファームでの登板は22年2試合、23年3試合と5試合投げただけ。デビュー以来ほぼ一軍で経験を積んできた投手と言える。
戸郷、菅野がいる中で大事に使われてきた「総投球数」
ただし山﨑は22年以来、一度も「エース」だったことがない。菅野智之、戸郷翔征と先発陣を引っ張る投手がいて、山﨑は2、3番手の扱いだった。さらには年間の総投球数を見ると、トミージョン手術明けということもあってか、大事に使われている印象がある。
〈山﨑のシーズン総投球数〉
22年=1602球、23年=2283球、24年=2408球
近年のエース級がクリアする2500球を超えることはなかった。1試合の投球数も120球を超えたのは2試合だけ。140球超えも珍しくなかった戸郷とは対照的だ。ただ今年の巨人は菅野がメジャーに移籍し、本来のエース戸郷がシーズン開幕直後に打ち込まれて登録抹消された。その中で山﨑は「エース」の称号を受け継いだ形になった。それゆえ経験していない過酷な球数や登板間隔を経験するかもしれない。
あと5イニングで日本記録も…巨人堅首への貢献こそ
なお開幕からの無失点記録は、1939年阪急の高橋敏が記録した39.1回、これに次いで2021年、西武の平良海馬が38回無失点を記録している。
次の登板で5イニングを無失点に抑えれば、NPB記録を更新する。しかし、山﨑の目指すところは、こうした記録ではなく、先発投手として長くチームに貢献することのはずだ。記録に拘泥することなく、安定感のある「自分の投球」を続けてほしい。

