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「死にそうじゃねぇかよ…」伊沢拓司が敗れた“本当の天才”…なぜクイズ界から消えた? “衝撃の引退宣言”全真相「青木は、強すぎたんです」 

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別府響

別府響Hibiki Beppu

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photograph byL)本人提供、R)Keiji Ishikawa

posted2025/05/14 11:03

「死にそうじゃねぇかよ…」伊沢拓司が敗れた“本当の天才”…なぜクイズ界から消えた? “衝撃の引退宣言”全真相「青木は、強すぎたんです」<Number Web> photograph by L)本人提供、R)Keiji Ishikawa

「引退宣言」でクイズ界を揺るがした天才・青木寛泰は今――

「引退宣言」を会場で聞いた伊沢の本音

「そうだよな。お前、あれだけやってたもんな」

 青木の「引退宣言」で騒然とする会場で、伊沢は心のどこかではそれを受け入れてもいた。

 誰より天才の恐ろしさを知る男は、喧騒の中で壇上から降りてきた後輩に一言だけ「お疲れさん」と声をかけた。

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「いろんな感情はありましたよ。ありすぎて塩対応になってしまいましたけど」

 ひとりのクイズプレイヤーとしては、正直に言えば喜びもあった。

 不世出の天才が、自ら表舞台から消えてくれたのだ。客観的に見れば、自分の順位がひとつ上がるのは間違いない。周囲からは「クイズ王」と呼ばれながら、その実後輩に勝てないという自身の中のわだかまりが解消されるきっかけになりうるのも事実だった。

 ただその一方で、本来なら青木の目標として、目の前の壁として立ち塞がらなければならなかったのは自分なのだという自責の念もあった。

「一番近くにいる壁として、僕がもっと強かったなら。もしそうあれたなら、青木という天才はクイズをやめなかったかな――というのは、やっぱりありました」

「僕にとって、青木以上の絶望はもうない」

 だからこそ伊沢は、その後もクイズを続ける道を選んだとも言える。

「僕にとって、青木以上の絶望はもうないわけです。実際には、その後の時代性とかを加味すれば青木より強いプレイヤーはいると思います。でも、どんなに強いやつに会っても、あの時の青木ほどの絶望感はない」

 伊沢は、「僕は一番強いプレイヤーというわけではなかったけれど」と続ける。

「それでも“クイズ王”という肩書きを背負い続けられたのは、やっぱり青木という存在を知っていて、自分の負けをよく知っているから。ちょっと引いた“楽しむ”スタンスでも、入り込んだ“競う”スタンスでも、この仕事をやりながら両方楽しめているというのは、青木に会って絶望して、逃げて……それゆえに今、希望を持てているからなんでしょうね」

 そうしてクイズを続けた伊沢は、大学4年時にQuizKnockというウェブメディアを立ち上げた。そしてこの頃から、テレビ番組『東大王』に端を発した「東大生ブーム」が巻き起こる。そしてその風を、伊沢は完全につかんだ。そこからの活躍は、もはや多くの人の知るところだろう。

「本当は青木の方が、僕よりクイズを好きだったんだと思うんです。すべてをクイズに懸けていたし、懸けることができていた。青木がやめなくて、僕がやめている世界線が多分正常で、よくあるパターンのはずだった」

【次ページ】 青木のいない世界で、伊沢は「クイズ王」を続けた

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