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「スマホやYouTubeで選べるから…」夏の甲子園優勝監督は今ドキ球児に“叱る意味を感じない”「仙台育英は練習に自由度がある」深い理由とは 

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村中直人/大利実

村中直人/大利実Naoto Muranaka/Minoru Ohtoshi

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photograph byHideki Sugiyama

posted2025/05/10 17:02

「スマホやYouTubeで選べるから…」夏の甲子園優勝監督は今ドキ球児に“叱る意味を感じない”「仙台育英は練習に自由度がある」深い理由とは<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

夏の甲子園で初となる深紅の大優勝旗「白河の関越え」を果たした仙台育英。“今ドキの高校球児”に須江航監督はどう働きかけているのか

須江 ぼくが嫌われているのかもしれませんが(笑)、心の扉を閉ざすのが早くなっている気がします。以前は、10秒や15秒は扉が開いていた気がしますが、今は叱られたり、怒られたりしそうになると、数秒でシャッターを閉じる。だからといって、仙台育英の生徒が素直さに欠けるわけでも、人の話を聞けないわけでもないんです。

村中 興味深い話ですね。素直で人の話を聞ける生徒が、「叱る」という行為に対してはすぐにシャッターを閉じる。そもそも、「叱る」にはその時その場の行動を変える効果しかないものですが、それが近年より顕著になっているということでしょうし、生徒たちが叱られることにしらけてしまっているのかなとも思います。

――スポーツ指導の現場を見ていると、すでに終わったプレーに対して、試合中に叱っている光景を目にします。

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村中 もう終わっていることであり、過去のことです。「叱る」というコミュニケーションに意味はないと考えたほうがいいでしょう。

須江 私も、公式戦で怒ることはまずないですね。

自分で選ぶことに慣れている世代

須江 今の子どもたちは、生まれたときから「自分で選ぶことに慣れている世代」だと感じています。スマホがあり、ユーチューブがあり、自分で見たいこと調べたことを選ぶことができる。そうやって育ってきているので、誰かに何かをやらされることへの耐性はかなり低いと感じます。それこそ、私が子どものときは、父親にテレビ番組の決定権があり、いつも『暴れん坊将軍』や『大岡越前』が流れていた記憶があります。でも、今はそういう家庭は圧倒的に少ないはずです。

――スマホやパソコンがあれば、見たい番組を自分で選ぶことができる。

須江 こうした背景が関係していると思いますが、自分が興味を持っていることにはとことん追求していく生徒が多い。ひとつの分野に、“尖っている”と言えばいいでしょうか。たとえば、「興味関心があることに関して、パワーポイントでプレゼン資料を作成する」という課題を出すと、大人が驚くような素晴らしい資料を作ってきます。一方で、興味関心がないことに対しては、こちらが丁寧に説明して、それに取り組む意味を伝えていかなければ、なかなか気持ちが向いていかない傾向にあります。

村中 なるほど、今のお話も面白いですね。

【次ページ】 自由度がある練習…一方で定期的な面談も

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