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「シャイは必要ない!」なでしこジャパン監督就任2カ月で米国撃破→優勝「時間は限られたが…まず心構えを」ニルス・ニールセンとは何者か
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井川洋一Yoichi Igawa
photograph byYuki Suenaga
posted2025/05/03 11:02
NumberWebのインタビューに応じてくれたニールセン監督。就任早々なでしこジャパンをシービリーブスカップ優勝に導いた指揮官は何者か
握手を交わし、自己紹介をした後、最初にこんな質問を投げかけてみた。既出のインタビューで、前職では現場で感じられた「世界最高の仕事」という実感が持てなかったと語っていたので、今はまた最高の気分を味わえていますかと。
「おっしゃる通り、私は今、とてもハッピーです。新しい選手たちだけでなく、そのほかにも素晴らしい人々と、ピッチの内外でまったく新しい経験ができているのだから」
なぜ就任2カ月で米国撃破できたのか
スーツも似合っているが、きっと現場の人なのだろう。志も高そうだ。シービリーブスカップ初優勝を称えると、彼はこう応じた。
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「日本が過去にこの大会で優勝していないことは、後になって知りました。いずれにせよ、このチームで良いスタートを切りたいと思っていましたが、率直に言って、優勝までは考えていなかった。ただ、シービリーブスカップは素晴らしい大会だが、メジャートーナメントではない。我々はもっと良いトロフィーを掲げたいのです」
とはいえ、オーストラリア、コロンビア、アメリカのすべてに勝利し、10得点2失点と文句のない成績を残している。特に最終戦では、これまでに1勝8分31敗の対戦成績だったアメリカから、13年ぶりの白星を獲得。敵地では初勝利だった。
監督も認めたように、確かにアメリカは主力を欠いていて、ベストチームではなかったかもしれない。それでも半年前のパリ五輪準々決勝で敗れた相手に、アウェーで勝ったのだ。この劇的でポジティブな変化は、どうやってもたらされたのだろうか。
どうやって、なでしこの「マインドセットを刺激した」か
「まず初めに、選手たちのマインドセットを刺激しました」とニールセン監督は語る。
「自分たちが試合をコントロールし、主導権を握ることができれば、勝利の可能性は高くなる。そう語りかけ、短い時間でやるべきことをやっていくうちに、選手たちの自信が高まっていくのが手に取るようにわかっていった。時間は本当に限られていました。でも日本代表選手のフットボール・インテリジェンスはものすごく高いので、彼女たちは私の意図をすぐに理解し、的確に表現してくれた。満足のいくトレーニングは、一度くらいしかできなかったというのに。
ただ元々、マイボール時については、何も心配していなかった。

