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「俺はチャンスのときしか集中できん」新庄剛志が阪神タイガースに残したもの… 盟友・坪井智哉が明かす新庄秘話「ツーさんは率には興味なくて…」
posted2025/05/16 18:24
阪神時代の新庄剛志。2000年には打率.278、28本塁打、85打点の成績を残した
text by

熊崎敬Takashi Kumazaki
photograph by
Naoya Sanuki
発売中のNumber1118・1119号に掲載の《[盟友の回想]2000年の新庄剛志》より内容を一部抜粋してお届けします。
新庄剛志の予告「俺も打ってくるわ」
漆黒の闇を切り裂き、白球がレフトスタンド場外へ消えていく。ベンチからその行方を見送った坪井智哉は、思わずうなった。
「この試合では、ぼくが先にホームランを打ったんです。そうしたら『俺も打ってくるわ』と宣言して、きっちり打ってしまったんです。もうさすがだと思いましたね」
2000年7月26日、長崎で行なわれたオールスター第3戦のこと。8回表の打席に向かう新庄剛志は、すでに3ランを放っていたタイガースの後輩に予告して、生まれ故郷のスタジアムにアーチをかけた。MVPは清原和博に譲ったが、ホームランを含む3安打。名実ともにオールスターの仲間入りを果たした。
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球宴だけではない。2000年の新庄は、打率.278、自身最多のホームラン28本、85打点と数字を残した。ホームランには先制や逆転といったいわゆる“役つき”のアーチが多く、9月30日のカープ戦で放ったシーズン最後の一撃はNPBにおける「20世紀最後のサヨナラ弾」となった。
応援ボイコットにさらされた3年前のオールスターは過去の出来事。記憶に加えて数字も残す男へ、そして甘いマスクのプリンスから明日のミスタータイガースへ。スターへの階段を駆け上がる新庄は、暗黒に射し込む希望の光であり、在阪メディアは連日その動向を追い続けた。当時、新庄グッズの売り上げはタイガース全選手の8割に達したと報じられた。
坪井「ツーさんは率にはまったく興味がなくて」
果たして新庄は、化けたのか。
公私にわたって行動をともにしていた坪井は、あっさり言い切る。
「プロ野球は何かしたからといって成績が上がる、そんな甘い世界じゃないですよ。長くやっていればいい成績が出るときもあるし、悪いときもあるわけですから」
数字が残ったこのシーズンも、チャンスでしか集中できない新庄のままだった。

