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「将棋を嫌いになりつつあった」「体も心も削り取られる1年」順位戦降級危機と敗戦直後…高見泰地が今も感謝する“後輩棋士の寄り添い”とは
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大川慎太郎Shintaro Okawa
photograph byShintaro Okawa
posted2025/04/20 06:03

満開の桜となった中でインタビューに応じてくれた高見泰地七段。新たな年度も、順位戦で渾身の棋譜を残すはず
「これまでの棋士人生で、いちばん将棋に向き合った1年でした。5勝7敗で、順位戦で初めての負け越しを経験しました。本当に相手が強かったです。秋にはメンタルも下がって本当に苦しみましたけど、それでも頑張れたのはやっぱりA級を目指しているからなんです。どんなにきつくても、B級1組にいればA級が見える。だからやれたんです」
B級1組は鬼の住処…高見もまた鬼なのである
鬼の住処。
B級1組は昔からそう評されている。高見の話を聞いていて、なるほど鬼は確かにいると思った。いや、鬼だらけだった。だが他の12人の鬼たちからすれば、高見もまた鬼なのである。
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すべてが終わっても、高見はしばらくの間、順位戦の表を机の前に貼っていた。だがこの取材をした3月末には、壁は真っ白だった。
「目に入るといろいろ思い出してしまって、気が休まらないですから」
あと1カ月ほどすると、日本将棋連盟から封書が届く。高見にとって2期目となるB級1組の表だ。じっくりと確認してから、また同じ位置に貼るだろう。それが高見の順位戦へのファイティングポーズなのだ。〈つづく〉

